運送業経営者・運行管理者、そしてドライバーの皆様、本日もお疲れ様です。

毎朝の日常点検、本当に車両を見てからチェックしていますか?

いきなり耳の痛い話かもしれませんが、私自身、ドライバーとして乗務していた頃を振り返ると、毎日日常点検を完璧にやっていたとはとても言えません。

毎日同じトラックに乗り、昨日も普通に走って帰ってきた。エンジンも普通にかかる。そういう日が何日も続くと、「今日も大丈夫だろう」という感覚になってしまいます。

そして気が付けば、車両を点検してからチェックするのではなく、日常点検表にチェックを付けること自体が目的になってしまう。

これは特別に意識の低いドライバーだけの話ではなく、毎日同じ作業を繰り返す運送現場だからこそ起こりやすい問題だと思っています。

今回は、弊社で実際に発生したオイル漏れの事例を交えながら、「日常点検は何のためにやるのか」を改めて考えてみます。

日常点検は「点検表を完成させるため」にやるものではない

事業用トラックの日常点検では、ブレーキやタイヤ、エンジン、灯火装置など、安全に運行するために必要な箇所を確認します。

毎日乗っていると当たり前になってしまいますが、トラックは非常に多くの部品からできています。昨日問題がなかったからといって、今日も問題がないとは限りません。

だからこそ運行前に状態を確認します。

ところが、現場ではこの順番が逆になってしまうことがあります。

本来なら、

「車両を確認する → 異常がないことを確認する → 点検結果を記録する」

という流れのはずです。

それがいつの間にか、

「点検表にチェックを入れる → 日常点検終了」

になってしまう。

これでは点検表は完成していても、車両を点検したことにはなりません。

私自身も「やっていなかった側」だから分かる

ここで「ドライバーはもっと真面目に点検するべきだ」と言うだけなら簡単です。

ただ、私はそう単純な話ではないと思っています。

なぜなら、私自身がドライバーだった頃、正直なところ日常点検をきちんとやっていなかったからです。

何も起きない日が続けば、人間はどうしても慣れます。毎朝チェックして100回連続で異常がなければ、101回目も大丈夫だろうと思ってしまいます。

さらに、運送会社の朝は忙しいです。

弊社でも、出勤から出発まで10分程度しかないドライバーがいます。その間に出発準備をして、点呼を受けて、日常点検も行います。

もちろん、それでも必要な点検はしなければなりません。

ただ管理する側としては、「ちゃんと点検しろ」と言うだけではなく、本当に点検できる時間や運用になっているのかも考える必要があります。

ドライバーの意識だけの問題にしてしまうと、結局は「点検しました」という書類だけが残ることになりかねません。

弊社で実際にあったオイル漏れ

日常点検について改めて考えるようになった出来事の一つが、オイル漏れです。

弊社では、これまでにオイル漏れが見つかったケースがあります。

一つはドライバー自身がオイル漏れに気付き、会社へ連絡してきたケースです。

もう一つは少し違います。

私がトラックの停まっていた場所を見たところ、地面にオイルが漏れた跡が残っていました。

「あれ? こんなところに油の跡があったかな」

そこから車両の異常に気付きました。

そのときは、配車を担当している私が当日の予定を調整して、できるだけ早く修理工場へ行かせました。

結果として配車を変更する必要はありましたが、大きなトラブルになる前に対応することができました。

こういう経験をすると、日常点検で見るべきなのは点検表だけではないと実感します。

トラックの下を見る。いつも停めている場所を見る。エンジン音を聞く。タイヤを見る。

日頃から乗っているドライバーだからこそ気付ける変化があります。

「オイルが減ったら足せばいい」は、今では通用しにくい

私自身、昔の感覚ではオイル漏れについて、今ほど重大な問題として考えていなかった部分があります。

多少漏れていても、「減ったらオイルを継ぎ足せばいい」という感覚です。

もちろん、オイル漏れの程度や原因によって状況は違います。しかし現在の運送現場では、「走れるから大丈夫」だけで判断するのは危険だと思っています。

特に私たちのように建設現場などへ出入りするトラックでは、車両からオイルを漏らすこと自体が大きな問題になることがあります。

現場の地面を汚せば清掃が必要になるかもしれません。作業に影響すれば、関係者にも迷惑がかかります。状況によっては現場から退場を求められることも考えられます。

さらに納品が止まれば、荷主にも影響します。

車両の修理代だけで済む話ではなく、清掃や再手配、納品への影響など別の損失が発生する可能性があります。そして何より、「車両管理のできていない運送会社」という印象を持たれることが怖い。

長年かけて築いた信用でも、失うときは一瞬です。

だから今は、オイル漏れを単なる整備上の問題ではなく、会社の信用にも関わる問題だと考えています。

異常を見つけて配車が崩れる。それでも報告してほしい

ドライバーから、

「オイルが漏れています」

「タイヤがおかしいです」

「警告灯が点いています」

と朝一番に連絡が来れば、配車担当者としては当然困ります。

その車両で予定していた仕事をどうするのか。別のトラックを回せるのか。ドライバーを入れ替えるのか。荷主へ時間変更をお願いするのか。

朝から予定を全部組み直すことになる場合もあります。

それでも私は、異常を黙ったまま出発されるより、はるかにいいと思っています。

早く分かれば対応できます。

午前中に修理工場へ入れることもできますし、別車両を使えるかもしれません。荷主にも早い段階で相談できます。

ところが、「これくらいなら大丈夫だろう」と走り続けて、納品先や高速道路上で動けなくなってから連絡が来れば、選択肢は一気に少なくなります。

配車担当者からすれば、異常を報告されることが問題なのではありません。

異常を把握できないまま運行していることの方が怖いのです。

日常点検で大切なのは「いつもとの違い」

もちろん、決められた点検項目を確認することが基本です。

そのうえで、現場のドライバーに特に意識してほしいのが「いつもとの違い」です。

昨日まではなかった油の跡がある。いつもよりタイヤが潰れて見える。エンジンの音が違う。エアの上がり方がおかしい。ランプが点かない。走り出したときに違和感がある。

こうした変化は、毎日同じ車両に乗っている人だからこそ気付きやすいものです。

「何となくいつもと違う」という感覚を軽く考えず、一度確認してみる。それでも分からなければ、整備管理者や会社へ報告する。

結果として何もなければ、それでいいと思います。

異常がなかったことを確認できたわけですから。

点検の形骸化はドライバーだけの責任なのか

この記事を書いていて、管理する側として一番考えさせられるのはここです。

「日常点検をちゃんとしてください」と社員教育で伝えることはできます。

しかし、朝ギリギリに出勤させて、すぐ出発しなければ納品時間に間に合わないような配車を組み、その一方で「日常点検は確実に」と言っても、現場では無理が出ます。

弊社でも出勤から出発まで10分程度のケースがあります。

これで十分なのかは、会社として改めて考える必要があります。

日常点検を形骸化させないためには、ドライバーへの教育と同時に、会社側も「本当に点検できる運用になっているか」を見直さなければなりません。

点検で異常を発見したドライバーに対して、「今日の配車どうするんや」と嫌な顔をしてしまえば、次から報告しにくくなるでしょう。

反対に、「出発する前に分かってよかった」と受け止める会社なら、異常を報告しやすくなります。

安全管理はルールだけではなく、こうした会社側の反応にも左右されると思います。

日常点検を「異常を探す時間」に戻す

毎朝の日常点検を、完璧にやることは簡単ではありません。

私自身がドライバーだった頃にできていなかったからこそ、よく分かります。

だからこそ、「日常点検をやりましょう」で終わらせるのではなく、何のためにやるのかを繰り返し考える必要があります。

点検表にチェックを入れるためではありません。

会社に提出する書類を完成させるためでもありません。

今日一日、このトラックで安全に仕事ができるのかを確認するためです。

そして異常を発見したら、早く会社へ伝える。

会社側は、その情報をもとに修理や配車変更を判断する。

ここまでつながって、初めて日常点検が実際の安全管理として機能します。

今月のドライバー教育として覚えてほしいこと

今回の記事で特に覚えてほしいのは、次の5点です。

  1. 日常点検は、点検表にチェックを入れることが目的ではない。
  2. 毎日乗っている車両だからこそ、「いつもとの違い」に注意する。
  3. 油の跡、異音、タイヤの異常、警告灯など、小さな変化を放置しない。
  4. 異常を感じたら「これくらいなら大丈夫」と自己判断せず、早めに会社へ報告する。
  5. 会社側も、ドライバーが点検できる時間と異常を報告しやすい環境を作る。

日常点検で異常が見つかれば、予定していた配車が崩れることもあります。

でも、出発前に予定が崩れるのと、道路上や納品先でトラックが止まってから予定が崩れるのとでは、会社が受けるダメージがまったく違います。

「異常が見つかったから困った」のではありません。

大きなトラブルになる前に見つけられた。

日常点検を、そんなふうに捉える会社にしていきたいと思っています。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に27年間携わる現役の行政書士。

運送会社で配車・営業・運賃交渉・ドライバー管理・安全管理などに携わりながら、現在は行政書士として運送業を中心に情報発信を行っています。

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