運送業の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。

「講習に行かせたいけど、平日丸一日潰れるのは痛い」 「基礎講習なんて3日間も拘束される。その間、誰が配車を回すんだ?」

運行管理者や補助者を選任する際、絶対に避けて通れないのが「講習」の受講です。ただでさえ人手不足が深刻な現場において、貴重な戦力を長時間外出させるのは、経営者にとって本当に頭の痛い問題ですよね。

しかし、現在は制度が大きく変わり、オンライン(eラーニング)での受講が広く普及しています。さらに2026年に向けて法規制や更新制度が厳格化する中、運行管理者の責任と教育の重要性はかつてなく高まっています。

今回は、忙しい運送会社が絶対に活用すべき「eラーニング講習の最新ルール」と、単なるビデオ視聴と甘く見ると痛い目を見る「AI監視の落とし穴」、そして確実に取りはぐれないための「助成金(返金)の手続きと注意点」を実務目線で徹底解説します。

1. Zoomではない!「オンデマンド方式」による1ヶ月間のゆとり

「オンライン講習というと、Zoomのように決まった時間にパソコンの前にいなければならないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、ご安心ください。

現在の運行管理者講習のeラーニング(ナスバなど)は、あらかじめ録画された講義動画を視聴する「オンデマンド方式」が主流です。教育や資格研修の分野では、インターネットを通じたこの動画視聴スタイルをオンライン講習と呼ぶのが一般的になっています。

受講期間は「決済後、指定日から30日間(1ヶ月間)」の猶予が設けられており、その期間内であれば24時間、早朝でも深夜でも自分の好きなタイミングで受講を進めることが可能です。また、1日あたりの受講時間は「最大6時間まで」と定められています。

これにより、「午前中の配車業務が落ち着いた後の2時間だけ進める」「週末の空き時間にまとめて受講する」といった柔軟な対応が可能になり、日々の業務への悪影響(戦力ダウン)を最小限に抑えることができます。

2. 「ながら受講」は無理!AI顔認証で動画が止まる仕組み

「なんだ、リアルタイムじゃないただの録画ビデオか。それなら事務所で別の作業をしながら流しておけばいいだろう」 もしそうお考えなら甘いです、現在のeラーニングは、受講態度を確認するためのシステムが導入されています。

  • 3〜5分ごとのAI顔認証と常時監視 受講にはカメラ付きのパソコンやタブレットが必須です。講習中はAIが常時受講態度を監視しており、3〜5分という短いスパンで顔認証が行われます。顔の大部分が隠れてしまう「マスクの着用」は事実上不可能です。
  • 目線外れ・離席・居眠りで動画が「強制ストップ」する 顔認証のタイミングで画面から目線が大きくずれたり、下を向いて別の作業(スマホをいじる等)をしたり、離席や居眠りをAIが検知すると、即座に警告が出て動画の再生がストップします。
  • 放置による「期間切れ(未修了)」のリスク 動画が止まっても、一発で受講権が剥奪されるわけではありません。画面の前に戻って正しく認識させれば再開は可能です。しかし、「ながら受講」をしていて動画が止まっていることに気づかず放置したり、受講期間(30日間)のギリギリになって寝落ちしてしまったりすると、期間内に終わらず「未修了」扱いになります。当然、期間切れになれば支払った受講料は戻ってきません。

いつでもどこでも受けられる手軽さはありますが、会場で受ける講習と同等かそれ以上に「電話や来客の邪魔が入らない環境」を自分で用意しなければならない点には注意が必要です。画面の前にしっかり座り、集中して受講する時間を確保するよう、従業員ご本人にも事前に強く念押ししておきましょう。

3. トラック協会会員必見!助成金の手続きと金額の「地域差」に注意

運行管理者講習の受講費用については、トラック協会の助成金を活用して実質的な会社の負担を減らすことが可能です。しかし、実務上の「お金と書類の流れ」には注意が必要です。

受講申し込み時に、その場で費用が免除(割引)されるわけではありません。基本は「先払い・後日返金」です。具体的な申請のステップは以下のようになります。

  1. まず自社で受講料を全額指定口座へ事前振込する。
  2. 期間内(決済後30日以内)にeラーニングを受講し、確実に修了する。
  3. ナスバ修了後に発行される「修了証明書」「領収書」と、トラック協会のサイトからダウンロードして記入した「助成金申請書」を用意する。
  4. 上記の両方をセットにして、トラック協会へ送付(提出)する。

これで後日、指定口座に助成金が返金される仕組みです。

🚨【ここが重要】地域ごとの「ローカルルール」と「補助金額の違い」
助成金の細かい申請手順、締め切り日、必要書類のフォーマットなどは、各都道府県のトラック協会ごとに「ローカルルール」が存在するケースが多々あります。

さらに重要な点として、「助成される補助金額(全額補助か、一部補助か)」も都道府県によって異なります。
「他の県の同業者から全額返ってくると聞いたのに」という思い込みは禁物です。

手続きで弾かれたり、想定外の出費で慌てたりしないよう、申請前には必ずご自身が所属する地域のトラック協会ホームページを直接確認し、自県のルールと金額を正確に把握してください。

4. まとめ:2026年問題に向けた「教育投資」の証拠作り

2026年以降、運送業界のコンプライアンス審査(5年ごとの許可更新制など)は劇的に厳しくなります。その際、「自社が適切に運行管理体制を敷き、従業員に教育を行っているか」という実績が、会社を守るための生命線となります。

eラーニングを活用すれば、現場の負担を最小限に抑えながら、この「教育の実績」を確実に積み上げることができます。

「時間がなくて講習に行かせられない」というアナログな言い訳はもう通用しません。AI顔認証のシステムや助成金の仕組みを正しく理解し、最新のツールを賢く活用して、会社の管理体制をアップデートしていきましょう。

運行管理者の皆様、講習の受講とあわせて、自社の帳票管理に抜け漏れがないか、こちらの無料ツールでサクッと診断しておくことをお勧めします。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に27年間携わる現役の行政書士。

運送会社で配車・営業・運賃交渉・ドライバー管理・安全管理などに携わりながら、現在は行政書士として運送業を中心に情報発信を行っています。

実際の運送会社経営で経験してきた失敗や課題、現場で起きているリアルな問題を、法律と実務の両面から分かりやすく解説しています。

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