燃燃料費は上がり、運賃は上がらない。その決算の傷が、更新制で免許を奪う。
燃料費が上がり続けるなかで運賃が据え置かれたまま、毎月の資金繰りをなんとか回しているけれど、決算書は赤字が続いている。
そういう会社が今の運送業界に少なくないことは、現場にいれば肌で分かります。
問題は、その「決算の傷」が2028年から始まると言われているトラック運送業の5年更新制において、許可の存続そのものを左右する審査基準に直結するということです。
今回は、先行導入された貸切バス業界の審査実務をもとに、財務基準の構造と、今からとれる具体的な対策を整理します。
更新審査の財務基準|「二重の不適合要件」という構造を理解する
更新審査では、安全に投資し続けられるだけの財務的な体力——いわゆる「経理的基礎」——があるかどうかが審査されます。
貸切バスの審査基準では、以下の2つの条件が両方揃った場合に、更新が原則として認められません。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 債務超過 | 貸借対照表の純資産合計がマイナス |
| ② 3期連続赤字 | 直近3事業年度の税引後当期純利益がすべてマイナス |
重要なのは「どちらか一方」ではないという点です。①と②が両方揃って初めて、不許可要件が成立します。
「1期でも黒字」があれば、最悪の事態は回避できる
この基準を正確に読むと、逆説的な出口が見えてきます。
仮に長年の赤字で現在債務超過(①)に陥っていたとしても、直近3年のうちどこか1期でも黒字を計上していれば、②には該当しません。つまり、この不許可要件だけは回避できます。
財務的に苦しい状況にある会社にとって、現実的で緊急度の高い目標はひとつです。
更新制が始まるまでに、直近の決算で「1期黒字」を作ること。
ただし、ここに落とし穴があります。表面上の黒字をつくっても、それだけでは審査を通過できません。
過去の決算だけでは終わらない|「事業収支見積書」で実態が問われる
更新申請では、向こう5年間の事業収支見積書の提出も求められます。以下のような計画は更新が認められません。
- 計画期間中、毎年連続で赤字となる見通し
- 最低賃金や適正な修繕費・人件費単価を下回るコストで組まれた計画
- 公認会計士・税理士の確認を欠いた不合理な内容
ドライバーの人件費や車両の修繕費を圧縮して表面上の黒字をつくっても、適正な安全コストを計上した上で利益が出る構造になっていなければ、審査は通りません。
現実的な収支計画を作るには、まず車両ごとの正確なコスト把握が前提になります。どんぶり勘定のまま見積書を作っても、それ自体が「不合理な内容」として審査でひっかかります。
更新制への備えは、まず「自社はいくらで運ばなければならないか」を知ることから
ここで問題になるのが、自社の原価を把握したうえで、それを運賃に反映できているかということです。
燃料費、人件費、車両価格、修繕費、タイヤ代などが上がっているにもかかわらず、何年も同じ運賃で走っていれば、利益が圧迫されるのは当然です。
私自身、運送会社で実際に運賃交渉をしていますが、単に「値上げしてください」とお願いするのではなく、まず自社の原価を把握し、荷主に提示する運賃と、その根拠となる資料を整えてから協議することが重要だと感じています。
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結論|運賃が原価を下回ったまま走り続けることの意味
連続赤字を脱却し、現実的な収支見積書を作るための答えは、結局ひとつです。
運賃が原価をカバーしていること。
荷主の言い値で赤字のまま走り続けることは、5年後の更新審査における許可取消リスクを自ら積み上げていることと同義です。
「更新制」というタイムリミットのカウントダウンは、今日この瞬間も進んでいます。
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この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
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