運送業の経営者・運行管理者の皆様、本日もお疲れ様です。
自動車運送事業を営むにあたり、万が一の事故が発生した場合の「行政への報告義務」は極めて重要な法令遵守事項です。しかし、どのような事故なら報告が必要で、どこまでなら不要なのか、その「境界線」を正しく理解していなければ、知らぬ間に法令違反(報告義務違反)を犯してしまうリスクがあります。
今回は「自動車事故報告規則」に基づき、報告義務の対象となる事故の範囲と実務上の注意点を、現役行政書士の視点からわかりやすく解説します。
※本規則は昭和26年制定の古い省令ですが、幾度もの法改正を経て現在も最新の基準として厳密に適用されています。
1. 自動1. 自動車事故報告書とは?誰に提出義務がある?
自動車事故報告書は、特定の重大な事故が発生した際に、その原因究明と再発防止対策のために国土交通大臣への提出が義務付けられている書類です。
【提出義務がある事業者等】
- 旅客自動車運送事業者
- 貨物自動車運送事業者(※軽貨物は除く)
- 特定第二種貨物利用運送事業者
- 自家用有償旅客運送者
- 整備管理者を選任しなければならない自家用自動車の使用者
※軽自動車、小型特殊、二輪の小型による自家用自動車の事故については適用されません。
2. 迷ったらここを見る!「報告すべき重大事故」の境界線
自動車事故報告規則(第2条)では、報告対象となる事故を15の類型で定めています。長くて複雑な法令ですが、実務上は以下の「4つのカテゴリー」に分類して覚えておくと境界線が見えやすくなります。
① 人身被害が伴う事故
- 死者又は重傷者を生じたもの。(※重傷者とは、14日以上の入院かつ30日以上の治療を要する傷害などを指します)
- 10人以上の負傷者を生じたもの。
② 運転者の法令違反・健康状態に関する事故
- 酒気帯び運転、無免許運転、麻薬等運転を伴うもの。
- 運転者の疾病(脳梗塞や心筋梗塞など)により、運転を継続できなくなったもの。
- 救護義務違反(ひき逃げ)があったもの。
③ 車両のトラブル・単独事故(※要注意!)
- 転覆(35度以上の傾斜)、転落(落差0.5m以上)、火災、鉄道車両との衝突・接触。
- 自動車の装置の故障により、運行できなくなったもの。
- 故障による車輪の脱落、被牽引自動車の分離。
- 積載されたコンテナの落下。
④ 社会的影響が大きい事故
- 10台以上の自動車の衝突・接触(多重事故)。
- 特定の危険物(毒物、可燃物、高圧ガス等)の飛散・漏えい。
- 鉄道を3時間以上休止させたもの。
- 高速道路・自動車専用道路を3時間以上通行止めにしたもの。
- 一般道を10時間以上通行止めにしたもの(※片側通行ができている場合は該当しません)。
3. 【注意喚起】意外と知らない?見落としがちなケース
「事故報告」と聞くと、他車との激しい衝突事故をイメージしがちですが、以下のような「車両単独のトラブル」も報告義務の対象となるため、経営者や運行管理者は特に注意が必要です。
- 故障によるレッカー移動 衝突していなくても、エンジンやブレーキ等の「装置の故障」により自走不能になった場合は報告対象です。単なるガス欠や軽微な修理で動く場合は除きますが、「故障で運行できなくなった」という事実が境界線となります。
- わずかな転覆・転落 見た目の損傷が少なくても、車両が「35度以上傾く(転覆)」、あるいは「道路外に0.5m以上落ちる(転落)」に該当すれば報告義務が生じます。
- コンテナ落下 走行中にコンテナが落下した場合、それによって人や物に被害が出ていなくても報告対象となります。
4. 報告の期限と、実務での「リアルな注意点」
重大事故が発生した場合、報告には「速報」と「自動車事故報告書(本報告)」の2種類があります。
① 速報(緊急報告)
- 期限: 事故発生から24時間以内(できる限り速やかに)
- 方法: 電話やFAXなどで管轄の運輸支局へ一報を入れます。
② 自動車事故報告書(本報告)
- 期限: 事故があった日から30日以内
- 方法: 報告書を3通作成し、管轄の運輸支局長を経由して提出します。
💡 行政書士からの実務アドバイス 事故報告書の作成は、事故の当事者(ドライバー)や相手方の保険会社への詳細なヒアリングが欠かせません。かなり細かい事項を正確に記入しないと、運輸支局から容赦なく差し戻されます。 以前、運輸支局の担当官に伺ったところ、「テレビや新聞で報道されるような事故は常にチェックしており、該当事業者からきちんと報告が上がるか注視している」とのことでした。「黙っていればバレない」は絶対に通用しません。
※事故報告を怠ったり、隠蔽したりすれば重大な法令違反となります。たった一度の行政処分が会社にどれほどの致命傷を与えるか、こちらの記事で今のうちに確認しておいてください。
5. よくある質問(Q&A)
Q. 軽度の人身事故(軽傷者1名、入院なし)でも行政への報告は必要ですか?
A. 本規則に基づく国土交通大臣への「事故報告書」の提出義務は生じません。しかし、運送事業者は別途、社内で事故に関する事項(概要、原因、再発防止策等)を記録し、3年間保存する義務(事故記録の保存義務)がありますので混同しないようご注意ください。
Q. 報告書の作成が難しい場合、どこに聞けばいいですか?
A. ご自身で対応される場合は、所属のトラック協会や管轄の運輸支局の担当者に相談してみてください。非常に親切に教えていただけます。もちろん、作成や提出の手間を省きたい場合は、専門家である行政書士にご依頼いただくのが確実です。
まとめ
自動車運送事業における事故報告は、法令により明確にその境界線が定められています。報告義務の有無を正しく判断し、期限内に正確な手続きを行うことは、会社の安全管理体制を守る第一歩です。
自社での判断に迷う場合や、行政対応に不安がある場合は、運送業専門の行政書士にぜひご相談ください。
※また事故報告書の未提出や、社内の事故記録簿の不備は、巡回指導でも真っ先に指摘される重欠陥です。自社の帳票管理に抜け漏れがないか、こちらのツールでサクッと診断しておくことをお勧めします。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。
▼運送業の運賃交渉・契約更新の相談はこちら
【初回無料】現役行政書士が直接回答します[お問い合わせ]
▼運賃交渉で悩んでいませんか?
- 原価がわからない
- 運賃を上げられない
- 荷主に言い返せない
その原因は
原価計算が出来ていないからです。 ノウハウを下記書籍にまとめています。
【Kindle Unlimitedなら¥0で読めます】
[【トラック新法対応】「お願い」する運賃交渉を、今日で卒業する本。]
🎁上記書籍 読者限定の無料ダウンロード特典
「車両価格推移レポート」「最低賃金推移レポート」「運送基本契約書テンプレート」など、実務の武器になる強力なツールを本の中の限定フォームからプレゼントしています!
▼ 【無料】巡回指導セルフチェックExcelのダウンロードはこちら
👉 [https://forms.gle/ZwkF1oKz5DqbG5ML6]
▼【無料配布中】利益を食う「問題車両・ドライバー」を数字で特定!