運送業経営者・運行管理者、そしてドライバーの皆様、本日もお疲れ様です。

4月は新年度のスタートです。新しいドライバーが入社したり、担当する車両や配送先が変わったりする会社も多いのではないでしょうか。

そこで4月のドライバー教育では、プロドライバーとしての基本である「日常点検」と「点呼」について、改めて考えてみたいと思います。

どちらもトラックドライバーなら毎日のように行っているものですが、毎日繰り返すからこそ怖いことがあります。それは、いつの間にか「やったことになっているだけ」になってしまうことです。

日常点検表にいつものようにチェックを入れる。アルコールチェックをして点呼を終える。そして、いつものように出発する。もちろん、何も起こらない日の方が圧倒的に多いでしょう。

しかし、それが何日も何年も続くと「昨日も大丈夫だったから、今日も大丈夫だろう」という感覚が出てきます。今回は私自身の経験も交えながら、日常点検と点呼を形だけにしないためにはどうすればいいのかを考えてみます。

正直、私自身も日常点検をきちんとやっていませんでした

私は長年、運送業に携わり、ドライバー、配車、営業、運行管理とさまざまな立場から現場を見てきました。

そんな私ですが、「ドライバー時代、毎日日常点検をきちんとやっていましたか?」と聞かれたら、正直、やっていませんでした。

決して褒められる話ではありませんが、同じような経験のあるドライバーもいるのではないでしょうか。

毎日同じトラックに乗っている。昨日も異常はなかった。今日も普通にエンジンがかかった。そんな日が続くと、少しくらい見なくても大丈夫だろうという感覚になってしまいます。

本来は車両を確認してから点検表にチェックを入れるはずが、いつの間にか「チェック表を埋めること」が目的になってしまう。日常点検が形骸化する怖さは、ここにあると思います。

日常点検は「チェック表を書く仕事」ではない

事業用トラックの日常点検では、ブレーキ、タイヤ、バッテリー、原動機、灯火装置など、安全な運行に関わる箇所を確認します。

ただ、大切なのは点検表そのものではありません。点検の目的は、運行する前に車両の異常を発見することです。

たとえば、「昨日まではなかった油の跡がある」「タイヤの状態がいつもと違う」「エンジンをかけると変な音がする」「警告灯が消えない」といった小さな違和感が、故障の初期症状かもしれません。

毎日乗っているドライバーだからこそ分かる「いつもと何か違う」という感覚があります。点検表のチェック欄だけを見るのではなく、この違いに気付くこともプロドライバーにとって大切だと思います。

実際にあったオイル漏れ。異常は意外なところから見つかる

弊社でも実際にオイル漏れが見つかったことがあります。

一つは、ドライバーから「オイルが漏れている」と連絡が入ったケースです。もう一つは、私自身がトラックの停まっていた場所を見たとき、地面にオイルが漏れた跡が残っていることに気付いたケースです。

そのときは配車を担当している私が当日のスケジュールを調整し、できるだけ早く修理工場へ行かせました。

昔の感覚なら、多少のオイル漏れについて「減ったら継ぎ足せばいい」くらいに考えていた部分もあったと思います。私自身も、昔ならその程度の感覚だったかもしれません。

しかし、最近の運送現場では、それだけでは済まないと感じています。

たとえば納品先や工事現場でオイルを漏らせば、清掃が必要になります。状況によっては作業を止めたり、現場から退場を求められたりする可能性もあります。納品に影響すれば、その後の対応や取引先との信用問題にまで発展するかもしれません。

「あの運送会社は車両管理ができていない」と思われれば、信用を取り戻すのは簡単ではありません。

オイル漏れは単なる車両故障ではなく、場合によっては会社の信用まで失いかねない問題です。そう考えると、日常点検の意味も少し違って見えてくるのではないでしょうか。

異常を見つけたら、自分だけで判断しない

ドライバーの皆さんにお願いしたいのは、車両に何か異常を感じたときに、自分だけで「これくらいなら大丈夫」と判断しないことです。

まず会社や管理者へ報告してください。

早めに報告してもらえれば、修理工場へ持っていく、別の車両に変更する、納品時間を調整する、荷主へ連絡する、配車を組み替えるなど、会社側も対応を考えることができます。

反対に、報告が遅れて大きな故障になってからでは、取れる選択肢が少なくなります。

配車をしている立場からすると、突然「このトラックは使えません」と言われれば、当然スケジュールの組み直しが必要になります。正直、困ることもあります。

それでも、異常を隠したまま走られる方がはるかに困ります。

異常を報告することは、会社に迷惑をかけることではありません。大きなトラブルになる前に異常を知らせることも、プロドライバーの大切な仕事です。

そもそも、本当に点検できる時間を作れているか

ここまでドライバー側の話を書いてきましたが、管理する側にも考えるべきことがあります。

弊社では、出勤してから出発するまで10分程度というドライバーもいます。その間に出発準備をして、日常点検をして、点呼を受けて出発します。

そう考えると、「本当に毎日きちんと点検できているのか」と聞かれれば、私自身も自信を持って「できている」とは言えません。実際には、チェックだけになっているケースもあるのではないかと思っています。

だからといって、「ドライバーの意識が低い」で終わらせるのも違うと思います。

会社が「日常点検を確実にやれ」と言うのであれば、本当に点検できる時間を確保しているのか。配車や出勤時間の組み方に問題はないのか。これは管理する側も考えなければならない問題です。

私自身、この記事を書きながら自社でも見直す必要があると感じています。

点呼はアルコールチェックだけではない

次は点呼です。

点呼というと、アルコールチェッカーに息を吹き込むことが真っ先に浮かぶかもしれません。しかし、点呼で確認するのは酒気帯びの有無だけではありません。

現在の貨物自動車運送事業輸送安全規則でも、業務前の点呼では、酒気帯びの有無に加え、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転ができないおそれがないか、日常点検の実施またはその確認などを行うことが定められています。

つまり点呼は、「今日、このドライバーとこの車を出して本当に大丈夫なのか」を確認する場でもあります。

ところが、これについても弊社には反省があります。

以前の弊社では、点呼が形式的になっていた時期がありました。点呼という形はあっても、ドライバーと十分なコミュニケーションが取れていたとは言えません。

現在は自動点呼も活用しています。自動化することで記録や確認を確実にできる部分もあり、管理者の負担軽減にもつながっています。

ただ、自動点呼を導入すればすべて解決するわけではないとも感じています。

「今日は何となくしんどい」「昨夜あまり眠れなかった」「朝から少し熱っぽい」。こうした本人にしか分からないこともあります。

機械を活用することと、人の異変を把握することは別の問題です。だからこそ、ドライバー本人からの申告も重要になります。

体調不良は、できるだけ早く伝えてほしい

弊社でも、ドライバーから「熱があるので早めに帰りたい」と自己申告されたことがあります。そのときは配車を調整して、早退してもらいました。

配車をする側としても、早く分かれば対応できます。この後の仕事を別のドライバーへ回したり、予定を変更したりする時間があるからです。

反対に、限界まで我慢してから「もう運転できません」と言われれば、対応は難しくなります。

体調がおかしいと感じたら、できるだけ早く伝えてください。「仕事に穴を開けたら迷惑がかかる」と我慢する気持ちも分かりますが、無理をして事故を起こしてしまえば、それ以上に大きな影響が出ます。

「代わりがいない」という中小運送会社の現実

ただし、ここは綺麗事だけでは済まない部分でもあります。

中小の運送会社では、「体調が悪いなら代わりのドライバーをすぐ出します」と簡単に対応できるとは限りません。

弊社でも、すでに荷物を積んでいる状態で体調不良を申告されたものの、代わりのドライバーがいなかったことがあります。そのとき私は、「積んでいる荷物だけは何とか降ろしてきてほしい」とお願いしたことがあります。

安全だけを考えれば、体調が悪ければ乗せないという判断になります。一方、配車をしている側には「では、この荷物を誰が届けるのか」という現実があります。

長く運送業に携わっていると、このような原則と現場の板挟みになる場面は少なくありません。

ただ、安全な運転ができないほど体調が悪いのであれば、荷物より安全を優先しなければなりません。

だから会社側も「体調が悪ければ申告してください」と言うだけではなく、申告されたときにどうするのかまで考えておく必要があります。誰かが代替できるのか、配車をどう変更するのか、荷主へどう説明するのか。点呼と配車は別々の話ではないと思います。

日常点検も点呼も「異常を見つけた後」が重要

日常点検と点呼には共通点があります。

日常点検では車両の異常を探し、点呼ではドライバーや運行上の異常を確認します。

ところが、異常を見つけただけでは安全にはつながりません。

オイル漏れが分かったのに、そのまま出発させる。体調不良が分かったのに、予定通り乗務させる。それでは何のために確認したのか分かりません。

異常が見つかったら、必要に応じて運行を変える。車両を修理に回す、配車を変更する、場合によっては運転を中止する。

日常点検や点呼は、チェック表や点呼記録を埋めたところで終わる仕事ではありません。そこで得られた情報を実際の運行に反映させて、初めて安全管理として機能するのだと思います。

4月のドライバー教育で覚えてほしい5つのこと

最後に、今回の教育内容を整理します。

  1. 日常点検は「異常なし」と記録するためではなく、異常を見つけるために行う。
  2. いつもと違う音、臭い、油の跡、タイヤの状態など、小さな違和感を無視しない。
  3. 車両の異常を発見したら、自分だけで判断せず、早めに会社や管理者へ報告する。
  4. 体調不良、疲労、睡眠不足など、安全な運転に不安がある場合も早めに申告する。
  5. 「昨日も大丈夫だったから今日も大丈夫」ではなく、毎日確認することを習慣にする。

私自身、ドライバー時代に日常点検をきちんとやっていたとは言えませんし、管理する立場になった現在でも、自社の点検や点呼が完璧だとは思っていません。

だからこそ、新年度の4月に一度立ち止まって考えてみる価値があります。

「日常点検をやっていますか?」ではなく、「本当に異常を見つけられる日常点検になっていますか?」

「点呼をやっていますか?」ではなく、「異常が見つかったときに、本当に運行を変更できていますか?」

書類上「やったことになっている安全管理」ではなく、事故やトラブルを実際に防ぐための安全管理にしていきたいところです。


4月の理解度チェック

Q1.日常点検を行う一番の目的は何でしょうか?

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Q2.駐車していた場所に、昨日まではなかった油の跡を発見しました。あなたならどうしますか?

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Q3.出勤時に体調が悪く、安全な運転に不安があります。どうしますか?

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Q4.車両や体調の異常を早めに報告することが大切なのはなぜでしょうか?

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Q5.今回の記事を読んで、自分の日常点検や点呼で改善した方がよいと思ったことを書いてください。

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今月、自分が一つ変えること

今回の教育を受けて、「明日から自分が一つ変えること」を書いてください。

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教育実施記録

実施年月日:   年  月  日
教育担当者:____________
受講者氏名:____________
受講者署名:____________

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に27年間携わる現役の行政書士。

運送会社で配車・営業・運賃交渉・ドライバー管理・安全管理などに携わりながら、現在は行政書士として運送業を中心に情報発信を行っています。

実際の運送会社経営で経験してきた失敗や課題、現場で起きているリアルな問題を、法律と実務の両面から分かりやすく解説しています。

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