運送業の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。
運送会社を経営していると、毎年必ず提出時期がやってくるのが**「事業実績報告書(および事業報告書)」**です。 初めて作成する経営者や配車担当の方からは、こんな悩みをよく聞きます。
「正確に書かないと怒られるのか?」 「間違えたら処分される? やっぱり行政書士に頼むべき?」
結論から申し上げます。27年間、運送会社の経営に携わり、実務を回してきた現役行政書士の目線で言えば、「この程度の定期報告や簡単な手続きで、毎回行政書士にお金を払う必要はありません」。
今回は、きれいごと抜きの現場目線で、「自分でやるべき手続き」と「プロに頼むべき手続き」の明確な境界線を解説します。
1. 事業実績報告書で「一番大事なこと」は内容ではない
事業実績報告書において、行政、運輸支局が最も厳しくチェックしているのはどこだと思いますか? 細かい数字の正確さ? いいえ、違います。
一番大事なのは、**「未提出になっていないか」「期限内に提出されているか」**です。
提出を怠っていると、巡回指導の際に確実に指摘(減点)対象となり、最悪の場合は行政処分の引き金にもなります。まずは「何が何でも期限までに出す」ことを最優先にしてください。
細かい数字に神経質になりすぎる必要はない
報告書には売上、車両数、実働車両数、輸送実績(トン数や走行距離)などを記入します。 もちろん、明らかな虚偽やデタラメな数字は言語道断ですが、実務的には**「自社の決算書や日報の集計をベースにした、大まかな数字」**で作成していれば、大きな問題になるケースはほとんどありません。ズレを合わせるために何日も徹夜するような書類ではないのです。
分からない時は「トラック協会」に質問をする
書き方で迷った時は、加入している都道府県のトラック協会(全日本トラック協会など)に電話で相談してみてください。会員であれば、書き方のマニュアルをもらえたり、窓口で丁寧に教えてもえらえたりすることが多いです。
2. 増車・減車の手続きも「自社でできる」
「仕事が増えたからトラックを1台追加したい(増車)」 「古い車を廃車にする(減車)」
運送会社であれば日常茶飯事のこれらの手続きも、わざわざ行政書士に依頼するのは「もったいない」と私は感じます。 車検証、車庫関係の書類、指定の申請書などを揃えて運輸支局へ行くだけです。最初は戸惑うかもしれませんが、一度流れを覚えてしまえば、事務員さんでも十分に回せる定型業務です。
3. ただし、「事故報告書」だけは話が全く別
定期報告や車両の入れ替えは自社でやるべきですが、重大な事故が起きた際に運輸支局へ提出する「事故報告書」、これだけは全く話が変わります。
自動車事故報告規則に基づくこの書類は、ご自身で作成しようとすると想像を絶する手間と労力がかかります。
- 事故の瞬間の推定速度
- 衝突の状況や車両の動き(詳細な図面の作成)
- ドライバーの健康状態や乗務記録
- 相手のケガの正確な具合(場合によっては医師の診断書に基づく正式名称の確認)
何より一番の問題は、「経営者のメンタルと時間」です。 重大事故が起きた直後、経営者は「ショックを受けているドライバーのケア」「保険会社とのシビアなやり取り」「激怒している荷主への謝罪」で極限状態に陥ります。精神的にも肉体的にもボロボロの状態で、行政向けの細かく複雑な報告書を冷静に書き上げるのは、正直不可能に近いです。
こういう「有事の際」こそ、行政書士という外部のプロを頼るべきなのです。
4. 専門家に依頼する価値がある「複雑な手続き」
運送会社の行政手続きの中で、書類の量が膨大になり、法律の専門知識が求められるものは以下の通りです。これらはプロに任せて、社長は本業(営業や配車)に専念した方がはるかに費用対効果が高くなります。
- 運送業の新規許可(一般貨物自動車運送事業)
- 営業所や車庫の移転・拡張(事業計画変更)
- 役員の変更に伴う手続き
- 重大事故の際の「事故報告書」の作成
まとめ:賢い運送経営者は「使い分ける」
27年間の実務目線で手続きを分類すると、このような感覚になります。
- 【自社でやる(お金をかけない)】 事業実績報告書・事業報告書 / 増車・減車
- 【外部に頼る(時間と安心を買う)】 事故報告書 / 新規許可 / 車庫・営業所の変更 / 役員変更
すべてを外注して無駄な経費を垂れ流す必要はありません。 「ルーティン業務は自社でこなし、面倒で複雑な部分だけを専門家にアウトソーシングする」。このメリハリの効いた考え方こそが、利益を残す運送会社の基本です。
自社でやるべきか、プロに頼むべきか迷った手続きがあれば、現場を知る行政書士へいつでもご相談ください。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。
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