運送業の経営者の皆様、本日も安全運行の管理、本当にお疲れ様です。 突然ですが、毎年の健康診断の結果が返ってきたとき、ドライバーの「血圧」の数値をしっかりチェックしていますか?
「血圧高めだけど、本人は元気そうだし薬も飲んでるからヨシ」 「再検査の通知が来ているけど、配車に穴を開けられないから後回し」
もし、そんな対応をしているとしたら、それは会社を吹き飛ばす時限爆弾のスイッチから目を逸らしているのと同じです。 今回は、なぜ運送業において「ただの高血圧」の放置が、会社が潰れるほどの致命傷に直結するのか、行政書士の視点から解説します。
1. 運送業で最も恐ろしい「健康起因事故」の正体
居眠りやスマホ見ながらの「前方不注意」も怖いですが、運送業において最も恐ろしいのは**「健康起因事故」**です。
運転席でドライバーが突然意識を失った場合、数トン〜数十トンの鉄の塊であるトラックは、ブレーキを踏まれることもなく、ノーコントロールのまま対向車線や歩道に突っ込みます。 国土交通省のデータでも、健康起因事故の要因として圧倒的に多いのが**「脳疾患(脳出血、くも膜下出血など)」と「心臓疾患(心筋梗塞、心不全など)」**です。
そして、この恐ろしい脳・心臓疾患を引き起こす最大の引き金(サイレントキラー)こそが、**「高血圧の放置」**なのです。
2. 「血圧が高いだけ」は通用しない。経営者の「安全配慮義務」
ドライバーはよくこう言います。 「昔から血圧は高いんですよ」 「とくに自覚症状もないし、運転には支障ありません」
27年間、運送の現場を見てきた私も、そんな言葉を何度も聞いてきました。現場の人間にとって、病院に行く時間はもったいないですし、仕事を休んで給料が減るのも嫌がります。
しかし、経営者がこの言葉を真に受けてはいけません。 万が一、高血圧を放置したドライバーが乗務中に倒れて大事故を起こした場合、警察や労働基準監督署、そして被害者の弁護士は、必ず会社の**「安全配慮義務違反」**を追及してきます。
「健康診断で『要再検査・要治療』となっていたのに、なぜ会社は通院させなかったのか?」 「なぜ、血圧が高いと分かっていながら、長距離や深夜の過酷な配車を組んだのか?」
この追及に対し、「本人が大丈夫だと言ったから」という言い訳は、法的には一切通用しません。 結果として、莫大な損害賠償、車両の全損、そして行政からの厳しい処分(事業停止など)が下り、会社は一発で立ち行かなくなります。
3. 経営者が今日からやるべき「3つの対策」
では、この最悪の事態を防ぐために、経営者はどう動くべきでしょうか。
① 健康診断の結果を「経営課題」として回収・確認する
健康診断の結果を本人任せにせず、必ず会社で回収し、経営者または運行管理者が全ドライバーの数値をチェックしてください。血圧や心電図などに異常所見がないか、目を光らせるのが第一歩です。できることなら最高ランクの健康診断を受けさせてください。
② 「要再検査」「要治療」は業務命令で行かせる
異常が出たドライバーには、口頭での「病院行けよ」ではなく、「業務命令」として受診を指示し、医師の診断書や受診の証明を提出させてください。 「病院に行く暇がない」というドライバーには、半休を取らせてでも行かせる。それが結果的に会社を守ります。
③ 医師の意見に基づいた「配車への配慮」
医師から「長時間の運転は控えるように」「深夜労働は避けるように」という意見が出た場合、それに従った配車を組まなければなりません。 短距離の地場配送への切り替えや、荷役作業の軽減など、具体的な配慮を行い、その「記録」を残しておくことが、万が一の際の会社の強力な防具になります。
まとめ:ドライバーの健康管理は、最強の「リスク管理」
「配車に穴を開けたくないから」と、健康状態に不安のあるドライバーを無理に走らせる。それは、目先の数万円の売上のために、数千万円のリスクを背負うギャンブルです。
運送業は体が資本です。そして、その体を管理し、守る仕組みを作ることこそが、経営者の最も重要な仕事の一つです。
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この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。
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