運送業の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。
前回の記事では、大手元請けから提示された「運賃据え置き+サーチャージ(燃料費・高速代)込み契約」を、私が明確に拒否した経緯についてお話ししました。
今回はその続きとして、実際に行った元請け担当者とのやり取りの中身を、できる限りリアルにお伝えします。
※本記事は実体験をもとにしていますが、企業名や契約条件の一部は守秘義務の観点から調整しています。 ※特定の企業を批判するものではなく、業界全体の構造的な問題提起を目的としています。
① 元請けの回答「運賃改定は書面で申し入れてください」
私が契約内容(込み込み契約)についての疑問を伝えたところ、担当者から返ってきたのは次の言葉でした。
「運賃改定をご希望であれば、書面で申し入れてください」
一見、丁寧で正論にも聞こえます。 しかし私は、この言葉に強烈な違和感を覚えました。
② 一社だけが動いても、現実は変わらない
私はこう返しました。 「下請けが何社もいる状況で、うち一社だけが書面を出しても、現実は動かないのではないでしょうか」
物流の現場では、元請けは複数の下請け会社を抱えています。その中で一社だけが運賃改定を申し入れても、「全体のバランスがあるから」「他社は据え置きで走ってくれているから」という理由で据え置かれる。これは決して珍しい話ではありません。
だからこそ本来は、元請け側から下請け全体に対して、物価上昇を踏まえた運賃改定の協議を提案する。それが筋ではないか、と私は考えています。
③ 「その時は運賃改定で対応すればいい」の嘘
さらに担当者は、こう続けました。 「燃料が上がった場合は、その“時”に運賃改定で対応すればいいと思います」
しかし、27年間現場で泥水をすすってきた感覚から言わせてもらえば、「その“時”は、永遠に来ません」。
実は、今回が初めてではありません。 これまでも私は、燃料高騰時や各種コスト増加時に、何度も運賃改定をお願いしてきました。しかし返ってくるのは決まってこうです。 「今、営業部が荷主と交渉中なので、もう少し待ってください」
そして結果として、運賃が見直されることは一度もありませんでした。 だからこそ私は、今回こう伝えました。 「後からの交渉ではなく、契約書の段階で条件を整理する必要があると考えています」
④ なぜ「後で」ではなく「今」決めなければならないのか
契約とは、「現時点での合意」です。
ここで「運賃据え置き・燃料費込み・高速代込み」という内容でサインをしてしまえば、将来いくらコストが上がっても、**「あの時、その条件で合意しましたよね?」**と突き返される絶対的な根拠を与えてしまいます。
だからこそ、「後で」ではなく「今」決めるべきだと判断したのです。
「令和7年4月から、トラック法改正により運送契約の書面化が義務付けられます。元請けの都合のいい口約束や『込み込み契約』に丸め込まれないための重要な防衛策です。」👉
⑤ 原価30%以上上昇の中で「込み契約」を結ぶということ
この6年間で、弊社の原価は20%から30%ほど上昇しています。 その状態で「燃料費」「高速代」までもを「運賃に含む」とする契約を結ぶということは、将来のコスト上昇リスクをすべて下請け(自社)で丸抱えすることを意味します。
仮に中東情勢などで軽油価格が200円、250円に跳ね上がれば、その時点で運行は完全に赤字に転落します。それでも、一度サインした契約だからと血を流しながら走り続けるのか。
その問いに対する私の答えが、「今回はサインしない」という決断でした。
⑥ 問題は「交渉方法」ではなく「構造」である
今回のやり取りを通じて感じたのは、問題の本質は「書面か口頭か」でも「交渉のやり方」でもないということです。
- 一社だけでは交渉が機能しない構造
- あらゆるリスクが下請けに集中する契約形態
- それが“慣習”として当たり前に続いている現実
これこそが、日本の物流業界を苦しめている本当の病巣です。
まとめ:だから私はサインしませんでした
私は、法外な特別な要求をしているわけではありません。 **燃料費は燃料費として、高速代は高速代として、適正に分けてほしい。**ただそれだけです。 それが整理されないのであれば、その契約にはサインできない、という結論になります。
今回のやり取りの最後に、私は担当者にこう伝えました。 「もし条件が整理されるのであれば、またご連絡ください」
赤字のリスクを抱え込んでまで、無理に取引を続ける必要はありません。しかし、お互いに適正な条件で合意できるのであれば、いつでも再開すればいい。それが私の経営者としての考えです。
この記事が、同じように元請けとの理不尽な契約に悩んでいる運送会社の経営者の方にとって、少しでも「断る勇気」の参考になれば幸いです。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。
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