運送業経営者・運行管理者、そしてドライバーの皆様、本日もお疲れ様です。

5月のドライバー教育では、「運転する人間の側」について考えてみたいと思います。

毎日トラックを運転していると、当然ですが運転には慣れてきます。

最初は緊張していた狭い現場にも普通に入れるようになり、初めて走ったときは何度も確認していた道路も、いつの間にか何も考えずに走れるようになります。

これはプロドライバーとして経験を積んできた証拠でもあります。経験があるからこそ危険を予測できたり、難しい現場でも落ち着いて対応できたりすることがあります。

ただ、その「慣れ」が常に安全な方向へ働くとは限りません。

「ここは何度も来ているから大丈夫」

「このくらいのスペースなら入れる」

「今まで事故を起こしたことがないから大丈夫」

こうした判断の中に、過信や思い込みが入ることがあります。

5月のドライバー教育①では、運転技術そのものではなく、人間が持っている「慣れ」「過信」「思い込み」について考えてみます。

ベテランドライバーでも判断を間違える

運転経験が長くなれば、当然、運転技術は上がります。

車両感覚も身につきますし、道路や現場を見ただけで「ここは危ないな」と感じることもできるようになります。

私自身も長年運送業に携わっていますが、経験によって防げる事故は間違いなくあると思っています。

一方で、経験を積んだからといって、人間そのものが間違えなくなるわけではありません。

国土交通省のトラック運転者向け指導・監督マニュアルでも、事故につながる心理的要因として、運転技能への過信や慣れ、焦りなどが挙げられています。

つまり、運転が上手いことと、絶対に事故を起こさないことは別の話です。

むしろベテランドライバーほど、経験から瞬間的に判断できる場面が増えます。

それ自体は大きな強みですが、ときにはその経験が「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫」という判断につながることがあります。

初めて行く現場では慎重になる

初めて行く納品先を想像してみてください。

入口はどこなのか。大型車が入れるのか。どこで方向転換するのか。高さ制限はないか。荷降ろし場所はどこなのか。

分からないことが多いので、自然と慎重になります。

場合によっては一度トラックを止めて、現場の人に確認することもあるでしょう。

ところが、同じ現場へ10回、20回、100回と行けばどうでしょう。

入口も分かっています。車両をどこへ付ければいいかも分かっています。荷降ろし場所も知っています。

当然、最初の頃ほど緊張しなくなります。

仕事に慣れるという意味では良いことです。

しかし、事故防止という意味では、ここに落とし穴があります。

「いつもと同じだろう」という思い込み

慣れた現場へ行くと、「今日もいつもと同じだろう」と考えやすくなります。

しかし、現場は毎日まったく同じとは限りません。

昨日まで何もなかった場所に資材が置かれているかもしれません。別の車両が停まっているかもしれません。工事によって通路が変わっているかもしれません。

道路も同じです。

毎日走っている道でも、今日は工事をしているかもしれません。いつも人がいない場所から歩行者が出てくるかもしれません。

「この場所を知っている」ことと、「今日も昨日と同じ状態である」ことは別です。

ところが人間は、経験があるほど過去の経験をもとに次の状況を予測します。

これは仕事を効率よく進めるためには必要な能力ですが、安全運転では、その予測が外れることも考えておかなければなりません。

「だろう運転」は特別な人だけがするものではない

安全教育では昔から、「だろう運転ではなく、かもしれない運転をしましょう」と言われます。

言葉としては、多くのドライバーが知っていると思います。

しかし、実際の仕事では知らないうちに「だろう」で判断していることがあります。

「この車は止まるだろう」

「歩行者は出てこないだろう」

「ここには何もないだろう」

「いつも大丈夫だから今日も大丈夫だろう」

本人は危険な運転をしているつもりがなくても、日常の中にはこうした判断がたくさんあります。

だから、「だろう運転をするな」と言うだけでは、なかなかなくならないのだと思います。

大切なのは、自分自身も思い込みで判断することがあると知っておくことです。

「今まで事故がなかった」は安全の証明ではない

長年無事故のドライバーは、それだけ安全運転を続けてきたということです。

これは素晴らしいことです。

ただし、「これまで事故を起こしていない」という事実が、これからも同じ運転で絶対に事故を起こさないことを保証してくれるわけではありません。

たとえば、少し確認を省略しても何も起こらなかったとします。

次の日も同じようにして、何も起こらなかった。

それが何十回も続けば、「この確認はしなくても大丈夫なのではないか」と思うようになるかもしれません。

しかし、何も起きなかったことと、安全な行動だったことは同じではありません。

たまたま歩行者がいなかっただけかもしれません。

たまたま他の車が来なかっただけかもしれません。

結果として事故にならなかった経験を積み重ねることで、逆に危険な行動が習慣になってしまうことがあります。

ここはベテランドライバーほど注意したいところです。

経験は「省略するため」ではなく「危険を予測するため」に使う

私は、ベテランドライバーの経験を否定するつもりはありません。

むしろ運送会社にとって、経験豊富なドライバーは非常に大きな財産です。

新人では判断できないことを、経験によって判断できます。

「この現場なら、この位置から入った方がいい」

「この荷物なら、この積み方をした方が安全だ」

「この道路はこの時間帯になると混む」

長年の経験があるからこそ分かることがたくさんあります。

問題は、その経験を何に使うかです。

「何回もやっているから確認しなくても大丈夫」

ではなく、

「何回もやっているからこそ、ここが危ないと分かっている」

という方向に使う。

経験は確認を省略するためのものではなく、危険を早く見つけるためのものだと思います。

思い込みは運転だけで起こるわけではない

これは運転中だけの話ではありません。

荷役作業でも同じです。

「いつもこのやり方でやっている」

「このくらいなら大丈夫」

「今まで落ちなかった」

そんな経験が積み重なると、少しずつ危険に対する感覚が鈍くなることがあります。

弊社でも長年仕事をしていると、事故やヒヤリハットが起きるたびに「なぜこんなことをしたのだろう」と思うことがあります。

しかし、本人に話を聞いてみると、わざと危険なことをしようとしたわけではありません。

その瞬間は「大丈夫だと思った」から行動しています。

だから事故防止では、「危険なことをするな」と言うだけでは十分ではないと思っています。

人間は、ときに危険な状況を「大丈夫」と判断してしまう。

その前提に立って、安全確認の方法や仕事のやり方を考える必要があります。

「自分だけは大丈夫」と思わない

交通事故のニュースを見ると、

「なぜこんな運転をしたのだろう」

と思うことがあります。

しかし、自分が同じような判断ミスを絶対にしないとは言い切れません。

私自身もドライバー経験がありますし、現在は配車や運行管理をしていますが、仕事の中で判断を間違えることはあります。

だからこそ、安全管理では「事故を起こす人」と「事故を起こさない人」を完全に分けて考えない方がいいと思っています。

誰でも間違える可能性がある。

ベテランでも思い込みはある。

管理者でも判断を間違える。

その前提で仕組みを作る方が現実的です。

管理者もベテランへの「任せっぱなし」に注意する

管理する側にも、慣れや思い込みがあります。

新人ドライバーなら、「この現場は大丈夫かな」「ちゃんと行けるかな」と心配して、細かく説明することがあります。

一方で、ベテランドライバーには、

「あの人なら大丈夫」

と任せてしまいがちです。

もちろん、経験豊富なドライバーに任せられる仕事はたくさんあります。

しかし、「ベテランだから何も言わなくていい」となると、安全に関する情報まで伝えなくなる可能性があります。

いつもの現場でも今日は工事をしている。

荷物の形状がいつもと違う。

荷降ろし場所が変更されている。

こうした情報は、ベテランにも必要です。

ドライバーが「いつもと同じだろう」と思い、配車担当者も「いつもの仕事だから説明しなくても分かるだろう」と思う。

この二つの思い込みが重なると、事故やトラブルにつながる可能性があります。

「いつもと違う」を一つ探す

慣れや思い込みを完全になくすことは難しいと思います。

人間である以上、毎回すべてを初めてのように考えることはできません。

そこで意識してほしいのが、

「今日は昨日と何が違うか」

という視点です。

いつもの道路でも、今日は何か違わないか。

いつもの現場でも、今日は配置が変わっていないか。

いつもの荷物でも、今日は形や重量が違わないか。

いつもの作業でも、今日は一緒に作業する人が違わないか。

「いつもと同じ」と考えるのではなく、一つでも「いつもと違うもの」を探してみる。

これだけでも、慣れによる思い込みを少し減らせるのではないかと思います。

5月のドライバー教育で覚えてほしいこと

今回の記事では、次の5つを覚えてください。

  1. 運転経験が長くても、思い込みや判断ミスがなくなるわけではない。
  2. 慣れている道路や現場ほど、「今日もいつもと同じ」と決めつけない。
  3. 「今まで事故がなかった」ことと、「その行動が安全だった」ことは同じではない。
  4. ベテランの経験は、確認を省略するためではなく、危険を早く見つけるために使う。
  5. 仕事を始める前に「今日はいつもと何が違うか」を一つ考える。

プロドライバーは、経験を積むほど仕事が上手くなります。

だからこそ、その経験を過信に変えないことが大切です。

「このくらい大丈夫」

「いつもやっているから大丈夫」

「自分は事故を起こさない」

そんな気持ちが出たときに、一度だけ立ち止まって確認する。

自分も判断を間違えることがあると知っている人の方が、結果として長く安全に運転できるのではないかと思っています。


5月の理解度チェック

Q1.運転経験が長くなることで生まれる「慣れ」には、どのような危険があると思いますか?

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Q2.「今まで事故がなかったから大丈夫」とは言い切れないのはなぜでしょうか?

________________________

Q3.毎日行っている現場で、安全のために意識できることを一つ書いてください。

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Q4.ベテランドライバーの経験は、安全運転にどのように活かすべきでしょうか?

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Q5.自分の仕事の中で「いつも大丈夫だから」と確認を省略していることがないか考えて書いてください。

________________________

今月、自分が一つ変えること

今回の教育を受けて、「明日から自分が一つ変えること」を書いてください。

________________________

________________________

教育実施記録

実施年月日:   年  月  日
教育担当者:____________
受講者氏名:____________
受講者署名:____________

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この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

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