運送業経営者・運行管理者、そしてドライバーの皆様、本日もお疲れ様です。

6月のドライバー教育では、「トラックの構造上の特性と、特性に応じた安全運転」を取り上げます。

トラックを運転するうえで、乗用車との違いを理解することは基本中の基本です。しかし、毎日同じ車両に乗っていると、その大きさや構造上の特徴を意識する機会は少なくなっていきます。

「これくらいなら曲がれるだろう」「この道幅なら通れるだろう」

こうした判断が、思わぬ接触事故につながることがあります。

トラックは、単に乗用車を大きくした車ではありません。車高、車幅、車長、重量、重心の位置などが異なり、運転時に注意すべきポイントも変わります。

今回は、トラックの構造上の特性を改めて確認し、事故を防ぐためにドライバーと運行管理者が意識しておきたいことを考えます。

運転席が高いことで生まれる錯覚

トラックの運転席は乗用車より高い位置にあります。

遠くまで見渡しやすく、前方の交通状況を把握しやすいという利点がありますが、一方で注意しなければならないこともあります。

それが、車間距離の錯覚です。

高い位置から前方を見下ろすことで、実際よりも車間距離が長く感じられることがあります。その結果、知らないうちに前の車との距離が短くなっている可能性があります。

また、運転席から遠くが見える反面、車両の直前には見えにくい場所があります。

信号待ちで前方に乗用車が停車していても、その位置によっては運転席から確認しにくくなることがあります。

運転席が高いから視界が良い、という認識だけでは不十分です。

見渡しやすい場所と、見えにくい場所の両方があることを理解しておく必要があります。

車長が長いトラックは、曲がるときの動きが違う

トラックの特徴の一つが、車体の長さです。

特に大型トラックはホイールベースが長く、右左折時に前輪と後輪が通る位置に大きな差が生まれます。

これが内輪差です。

乗用車と同じ感覚で交差点を曲がろうとすると、後輪が予想以上に内側を通り、縁石や構造物に接触することがあります。

左折時には、自転車やバイク、歩行者を巻き込む危険もあります。

ここで大切なのは、内輪差を理解するだけでなく、実際の運転操作に反映させることです。

交差点に進入する前から十分に減速し、左側方の安全を確認する。歩行者や自転車の動きが不明な場合には、安全を確認できるまで進まない。

車体が大きいから仕方がない、では済まされません。

トラックの構造を理解したうえで、その大きさに合った運転をする必要があります。

なお、内輪差を避けようとして左折前に不用意に右側へ車体を振る行為も危険です。周囲の車両との接触や、左側への二輪車の進入を招く可能性があります。

内輪差とリヤ・オーバーハングについては、6月②で詳しく取り上げます。

車幅の広さは、狭い道路や配送先で問題になる

トラックは乗用車より車幅が広く、道路上で占めるスペースも大きくなります。

広い幹線道路ではそれほど気にならなくても、住宅街や工場の構内、建設現場への進入路では、車幅の違いが大きな問題になります。

特に注意したいのが、道路脇の電柱、看板、フェンス、駐車車両などです。

運転席から見たときには十分な余裕があるように感じても、実際には車体との間隔がわずかしかない場合があります。

また、ミラー自体が車体より外側に張り出していることにも注意が必要です。

車体が通れても、ミラーが障害物に接触することがあります。

狭い道路では、無理に進むのではなく、必要に応じて停止して周囲を確認することが重要です。

安全に通行できるか判断できない場合には、会社へ連絡して別の経路を検討することも必要になります。

車高はトラック本体だけを見ればよいわけではない

平ボディトラックやユニック車を扱う運送会社では、車高の確認も重要です。

トラック本体の高さを把握していても、積載した荷物によって全体の高さが変わることがあります。

たとえば、背の高い機械や建設資材を積載した場合、荷物の上端がトラック本体より高くなることがあります。

その状態で高架下や工場の出入口を通過すると、荷物が上部の構造物に接触する危険があります。

また、積載状態によって車体の高さが変化することもあります。

荷物を積んでいるときに通れた場所でも、荷物を降ろして車体が上がることで、同じ場所を通れなくなる可能性があります。

大切なのは、車検証などに記載された車両の高さだけで判断しないことです。

実際に運行する状態での高さを把握し、通行する経路の高さ制限と照らし合わせる必要があります。

特に初めて訪問する配送先では、事前に進入経路を確認しておくことが重要です。

車高と配送先での事故防止については、6月③で詳しく取り上げます。

重心が高いトラックは横転にも注意する

トラックは乗用車と比較して重心が高くなりやすい車両です。

さらに、積載する荷物の種類や積み方によって、重心の位置が変化します。

重い荷物を高い位置に積んだ場合や、左右どちらかに偏った状態で積載した場合には、走行時の安定性が低下する可能性があります。

特にカーブでは注意が必要です。

速度が高い状態でカーブに進入すると、車両に大きな横方向の力が働きます。

重心が高い車両ほど横転の危険が大きくなるため、カーブに入る前から十分に速度を落としておくことが基本です。

ユニック車では、クレーン装置の重量や取付位置、積荷の状態なども車両の特性に影響します。

同じトラックでも、空車時と積載時では走行時の感覚が異なることがあります。

普段から運転している車両であっても、積載条件が変われば慎重な運転が必要です。

「運転が上手い」だけでは防げない事故がある

トラックの事故というと、ドライバーの不注意や確認不足が原因として挙げられることがあります。

もちろん、安全確認を怠った運転には問題があります。

しかし、事故を防ぐためには、運転技術や注意力だけに頼らないことも重要です。

たとえば、そもそも車両が安全に進入できない道路を配送経路として指定していた場合、ドライバーがどれほど慎重に運転しても危険が残ります。

高さ制限のある道路を通らなければ配送先へ到着できない場合や、車幅に対して進入路が極端に狭い場合も同様です。

こうした問題は、ドライバー個人の注意だけでは解決できません。

会社側が車両の寸法を把握し、配送先の条件に合った車両を手配することが必要です。

配車担当者や運行管理者が事前に危険な経路を把握し、ドライバーへ情報を伝えることも事故防止につながります。

運行管理者は車両ごとの違いを把握しているか

複数のトラックを保有する運送会社では、車両によって全長、全幅、全高が異なることがあります。

同じ大型車でも、ボディの長さやクレーン装置の有無などによって取り回しは変わります。

普段乗っている車両から別の車両へ乗り換える場合には、特に注意が必要です。

運行管理者としては、ドライバーが担当する車両の特性を理解しているか確認しておきたいところです。

また、車両ごとの寸法を一覧にしておけば、配車や経路の検討にも役立ちます。

車両の全長、全幅、全高、最大積載量などを確認できる資料を用意し、必要なときにすぐ参照できる状態にしておくことも一つの方法です。

車両の構造上の特性を教育することは、ドライバーに知識を覚えてもらうだけではありません。

会社として、その知識を安全な配車や運行管理につなげることが重要です。

6月のドライバー教育で覚えてほしいこと

今回の教育では、次の5つを確認してください。

  1. トラックは運転席が高く、車間距離や直前の車両の見え方に注意が必要である。
  2. 車長が長いため内輪差が大きく、右左折時には乗用車とは異なる車両の動きをする。
  3. 車幅が広いため、狭い道路や配送先では車体だけでなくミラーなどの張り出しにも注意する。
  4. 車高は積載物や積載状態によって変化するため、実際の運行状態で確認する。
  5. 重心が高い車両は、積載状態やカーブでの速度によって横転の危険が大きくなる。

トラックの構造上の特性は、ベテランでも新人でも変わりません。

長年無事故で運転しているドライバーであっても、車両の寸法や構造を無視して安全に運転することはできません。

「注意して運転する」という意識は大切ですが、それだけでは不十分です。

なぜ危険なのかを理解し、その危険を避けるために具体的な行動を取ることが必要です。

運送会社としても、事故が起きてから注意を促すだけでなく、車両の構造に応じた安全教育と運行管理を続けていきたいものです。


6月の理解度チェック

Q1.トラックの運転席が高いことで、車間距離の見え方にはどのような特徴がありますか?

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Q2.内輪差とは何ですか?

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Q3.車幅の広いトラックが狭い道路を通る際、どのような障害物に注意する必要がありますか?

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Q4.平ボディトラックで車高を確認するとき、車両本体以外に何を確認する必要がありますか?

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Q5.トラックの横転を防ぐため、カーブに入る前に行うべきことは何ですか?

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今月、自分が一つ変えること

今回の教育を受けて、トラックの構造上の特性について、今後の運転で特に意識したいことを一つ書いてください。

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教育実施記録

実施年月日:   年  月  日

教育担当者:____________

受講者氏名:____________

受講者署名:____________

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

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