運送業経営者・運行管理者、そしてドライバーの皆様、本日もお疲れ様です。

「あと一件だから」

「あと30分走れば着くから」

「これを降ろせば今日の仕事は終わりだから」

トラックドライバーなら、一度くらいはこんなことを考えながら走った経験があるのではないでしょうか。

私自身、長年配車をしていますので、管理する側から「あと一件行ってほしい」と思うこともあります。

トラックが空いている。時間もまだある。荷主から急な依頼が入った。それなら、もう一件お願いしたい。

配車表だけを見ていると、それほど無理なお願いには見えないこともあります。

しかし、そのトラックを運転しているドライバーは、朝から何時間も運転し、荷役作業をしているかもしれません。

車両が動けることと、人間が安全に運転できることは同じではありません。

5月のドライバー教育③では、疲労や眠気、焦りが運転に与える影響と、ドライバーだけではなく配車・運行管理をする側が考えなければならないことについて取り上げます。

「疲れているけど、まだ走れる」が一番判断しにくい

疲労には分かりにくいところがあります。

明らかに体調が悪ければ、「今日は無理だ」と判断できます。しかし、少し疲れている程度なら、多くの人はそのまま仕事を続けます。

「これくらいなら大丈夫」

「いつものことだから」

「もう少しで終わるから」

そう考えるのは自然なことです。

問題は、本人が「まだ大丈夫」と思っている状態でも、集中力や判断力が普段と同じとは限らないことです。

確認が一つ抜ける。いつもなら待つ場面で先に行ってしまう。車間距離が少し短くなる。バックするときの確認が雑になる。

一つひとつは小さな変化かもしれません。

しかし、運転ではその小さな変化が事故につながることがあります。

トラックドライバーの疲労は運転だけではない

トラックドライバーの疲労を考えるとき、「何時間運転したか」だけでは分からないことがあります。

特に弊社のようなユニック車の場合、現場へ着けば終わりではありません。

荷物を降ろす作業があります。

現場によっては狭い場所へ車両を入れ、周囲を確認しながらクレーンを操作し、荷物を安全に降ろさなければなりません。

夏場なら暑さもあります。

雨の日なら濡れながら作業することもあります。

現場で神経を使った後、再びトラックに乗って次の現場へ向かいます。

運転時間だけを見ればそれほど長くなくても、本人にはかなり疲労がたまっていることがあります。

配車をする側は、この部分を忘れないようにしなければならないと思っています。

「あと一件」が事故につながることもある

配車をしていると、夕方になって急な仕事が入ることがあります。

トラックを見ると空いている。

時間的にも行けそうに見える。

そんなとき、

「悪いけど、これ一件だけ行ってくれへん?」

と頼みたくなります。

もちろん、それ自体がすべて悪いわけではありません。

問題は、トラックが空いているという理由だけで判断することです。

そのドライバーが朝何時から働いているのか。その日どんな仕事をしてきたのか。荷役作業は多かったのか。休憩は取れているのか。

同じ「あと一件」でも、午前中の一件と夕方の一件では意味が違います。

ドライバー本人も、「頼まれたから断りにくい」と思うかもしれません。

特にベテランや責任感の強いドライバーほど、「行けます」と答えてしまうことがあります。

だから管理者側も、「本人が行けると言ったから大丈夫」で終わらせないことが必要です。

眠気を気合いで何とかしようとしない

疲労と同時に注意したいのが眠気です。

運転中に眠くなったとき、昔からいろいろな方法が言われてきました。

窓を開ける。冷たい空気を入れる。コーヒーを飲む。ガムを噛む。音楽を大きくする。

私もドライバー経験がありますので、眠気を何とかしようとする気持ちは分かります。

しかし、本当に眠い状態であれば、こうした方法だけで無理に走り続けるべきではありません。

国土交通省のトラック運転者向け指導・監督マニュアルでも、運転中に疲労や眠気を感じた場合は運転を中止し、休憩または睡眠をとることが重要とされています。

「あと少しだから」が一番怖いところです。

目的地まであと20分。

高速道路の出口まであと少し。

次のサービスエリアまであと少し。

そう考えている間にも車は走り続けています。

眠気を感じたら、無理をして距離を稼ぐより、安全な場所で一度休む。

到着が少し遅れることと、事故を起こすことを比べれば、どちらを優先するべきかは明らかです。

遅れているときほど焦りが出る

疲労や眠気だけでなく、焦りも運転を変えます。

前の現場で荷降ろしに時間がかかった。

渋滞にはまった。

高速道路が事故で止まっている。

こうした理由で予定より遅れることは、運送業では珍しくありません。

問題は、その遅れを運転で取り戻そうとすることです。

「少し急げば間に合う」

「この信号を行けば取り戻せる」

そんな心理になることがあります。

しかし、10分遅れているからといって、安全確認を短くしていいわけではありません。

配車をする側にも責任があります。

ドライバーから「遅れています」と連絡が来たときに、

「何とか間に合わせて」

とだけ言えば、ドライバーは無理をするかもしれません。

本来、遅れへの対応は運転者だけに背負わせるものではありません。

荷主や納品先へ連絡する。次の仕事を調整する。必要なら配車を変更する。

こうした対応は会社側の仕事です。

延着より事故の方がはるかに困る

配車をしていると、納品時間は当然気になります。

荷主との約束がありますし、現場では荷物を待っています。

遅れれば電話もしなければなりません。

場合によっては注意されることもあります。

それでも、事故を起こすよりはるかにいい。

これは管理する側がはっきり示しておく必要があると思います。

ドライバーが、

「遅れたら怒られる」

と思っていれば、無理をしてでも間に合わせようとします。

逆に、

「遅れそうなら早めに連絡すれば会社が対応する」

と分かっていれば、無理な運転をする必要はありません。

安全運転を求めるのであれば、「絶対に遅れるな」と「絶対に無理をするな」を同時に押し付けることはできません。

道路状況や現場の状況は毎日変わります。

どうしても間に合わない日はあります。

そんなとき、ドライバーが安全を優先できる会社であることが大切です。

休憩を「空いている時間」と考えない

配車をしていると、ドライバーが休憩している時間を見ると、

「ここで一件入れられるのでは?」

と思ってしまうことがあります。

しかし、休憩には意味があります。

特に朝から運転や荷役を続けてきたドライバーにとっては、次の運行を安全に行うための時間でもあります。

休憩をすべて「仕事を入れられる空き時間」として扱えば、当然疲労はたまっていきます。

これは私自身も配車担当者として気を付けなければならないところです。

効率を上げることと、隙間なく仕事を詰め込むことは同じではありません。

トラックを最大限動かした結果、事故を起こして車両が何週間も止まれば、何のために効率を上げたのか分からなくなります。

ドライバー側からも「今日は厳しい」と言ってほしい

会社側が気を付けるだけでなく、ドライバー側からの情報も必要です。

配車担当者には、運転席に座っている本人の疲労までは分かりません。

朝からどれくらい疲れたのか。昨夜よく眠れたのか。現場でどれくらい体力を使ったのか。

本人にしか分からないことがあります。

だから、

「今日はかなり疲れています」

「少し休憩してからでないと厳しいです」

「この一件は今日は難しいと思います」

ということも、必要なら伝えてほしいと思います。

もちろん、何でも「無理です」で済ませれば仕事は回りません。

ただ、本当に安全な運転が難しい状態まで我慢する必要もありません。

会社とドライバーがお互いに情報を出しながら、その日の運行を考えることが大切です。

「疲れていること」を弱さと考えない

長く運送業界にいると、昔ながらの考え方に触れることがあります。

「昔はもっと走った」

「眠いくらいで休んでいたら仕事にならない」

「若い頃は寝ずに走った」

確かに、そういう時代があったことは私も分かります。

しかし、昔できたことが、今もやるべきこととは限りません。

疲れることも眠くなることも、人間として普通の反応です。

大切なのは、それを隠して走り続けることではなく、自分の状態を把握して安全な行動を取ることです。

プロだから疲れないのではありません。

疲れたときにどう判断するかまで含めてプロの仕事だと思います。

管理者は「車」ではなく「人」を配車している

配車表には、トラックの番号や行き先、時間などが並びます。

毎日それを見ていると、どうしても「この車が空いているから、この仕事を入れよう」と考えがちです。

しかし、そのトラックを動かしているのは人です。

同じ4トン車でも、朝から近距離を一件だけ走った車と、何件も現場を回って荷役をしてきた車では、ドライバーの状態が違います。

トラックの稼働状況だけを見て配車するのではなく、

「この人は今日どんな一日を過ごしているのか」

まで見る。

これは、AIやシステムだけでは簡単に判断できない配車担当者の仕事の一つだと思っています。

5月のドライバー教育で覚えてほしいこと

今回の記事では、次の5つを覚えてください。

  1. 疲労や眠気がある状態では、本人が思っている以上に集中力や判断力が低下している可能性がある。
  2. 「あと一件」「あと少し」という気持ちで無理をしない。
  3. 遅れを運転で取り戻そうとせず、早めに会社へ連絡する。
  4. 休憩は無駄な時間ではなく、安全に運行を続けるために必要な時間である。
  5. 管理者側もトラックの空きだけを見るのではなく、ドライバーの疲労やその日の仕事内容まで考えて配車する。

事故防止というと、「ドライバーがもっと注意する」という話になりがちです。

しかし、人間の集中力には限界があります。

疲れている人に「集中しろ」と言うだけでは、根本的な対策にはなりません。

ドライバーは、自分の疲労や眠気を無視しない。

管理者は、無理な運行になっていないかを見る。

そして遅れそうなときは、運転で取り戻すのではなく会社全体で対応する。

安全運行は、ドライバー一人の注意力だけで作るものではありません。

「あと少しだから大丈夫」

そう思ったときこそ、本当に大丈夫なのか一度考える。

その判断が事故を防ぐこともあると思います。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

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