運送業経営者・運行管理者、そしてドライバーの皆様、本日もお疲れ様です。
毎日の点呼、皆さんの会社ではどのように行っているでしょうか。
アルコールチェッカーに息を吹き込み、結果を確認して、必要事項を記録して出発する。毎日のことなので、いつの間にかこれが「点呼」そのものになっている会社もあるかもしれません。
弊社でも以前は、点呼が形式的になっていた時期がありました。点呼という形はあっても、ドライバーと十分にコミュニケーションを取れていたかと聞かれると、そうではなかったと思います。
現在は自動点呼を導入し、以前より確実に確認や記録ができるようになりました。ただ、実際に自動点呼を使うようになって改めて感じることもあります。
それは、点呼の本当の目的は「アルコールチェックをして記録を残すこと」ではないということです。
今回は、弊社で実際にあったドライバーの体調不良や、配車担当者として経験した葛藤も含めて、点呼は何のために行うのかを考えてみます。
点呼で確認するのはアルコールだけではない
点呼というと、どうしてもアルコールチェックのイメージが強くなります。
もちろん酒気帯びの有無を確認することは非常に重要です。しかし、業務前の点呼で確認することはそれだけではありません。
現在の貨物自動車運送事業輸送安全規則では、業務前の点呼において、酒気帯びの有無だけでなく、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由によって安全な運転ができないおそれがないか、日常点検が実施されているかなどを確認することが定められています。
つまり、点呼で確認したいことを一言で言えば、
「今日、このドライバーをこのまま運行させても大丈夫なのか」
ということです。
アルコールの数値がゼロだから、それだけで安全に運転できるとは限りません。
熱があるかもしれない。ほとんど眠れていないかもしれない。体調がいつもと違うかもしれない。
こうした状態を運行前に把握することも、点呼の大切な役割です。
弊社でも以前は点呼が形式的になっていた
ここは弊社の反省点でもあります。
以前は、点呼が形だけになっていた時期がありました。
毎日同じドライバーが出勤し、同じように仕事へ行く。何も問題が起こらない日が続けば、点呼も徐々に「毎朝やらなければならない作業」のようになってしまいます。
これは日常点検とよく似ています。
日常点検表にチェックを付けることが目的になるのと同じように、点呼も「点呼を実施したという記録を残すこと」が目的になってしまうことがあります。
しかし、本来は逆です。
ドライバーの状態を確認した結果として、点呼記録が残る。
記録を作るために点呼をするのではありません。
この順番を間違えると、書類上はきれいに点呼が行われていても、実際の安全管理にはつながらなくなります。
自動点呼を導入して分かったこと
現在、弊社では自動点呼を導入しています。
自動点呼には大きなメリットがあります。決められた手順で確認が進み、記録も残ります。管理者側の負担を減らせる部分もあり、点呼を確実に実施する仕組みとして非常に有効だと感じています。
弊社の場合、導入してすぐに何もかもスムーズにいったわけではありません。実際に運用しながら慣れていった部分もあります。
ただ、自動点呼を使うようになったからこそ、「機械にできる確認」と「人にしか分からないこと」の違いも見えてきました。
たとえばアルコールの数値や決められた確認事項は、機器を使って確実にチェックできます。
一方で、
「今日は何となく体が重い」
「昨夜ほとんど眠れなかった」
「朝から少し熱っぽい」
「薬を飲んでいて、いつもより眠気がある」
といった本人の感覚まですべて機械が判断してくれるわけではありません。
どれだけ点呼の仕組みが進化しても、最後にはドライバー自身が自分の状態を正しく申告することが必要になります。
実際にあった「熱があるので早く帰りたい」という申告
弊社でも、ドライバーから体調不良を申告されたことがあります。
「熱があるので、今日は早めに帰りたい」
という自己申告でした。
そのときは配車を調整して、早退してもらいました。
こういうとき、配車担当者として一番ありがたいのは、早めに言ってもらうことです。
早い段階なら、その後に予定していた仕事を別のドライバーへ回す、納品時間を変更する、荷主へ連絡するといった対応ができます。
ところが、本人が我慢して仕事を続け、どうにもならなくなってから「もう運転できません」と言われれば、対応できる選択肢はかなり少なくなります。
ドライバーからすれば、「会社に迷惑をかけたくない」「今日の仕事だけは終わらせたい」と思うこともあるでしょう。
その気持ちはよく分かります。
ただ、体調不良を隠して無理に運転し、事故を起こしてしまえば、それ以上に大きな問題になります。
体調がおかしいと感じたら、できるだけ早く会社へ伝えてほしいと思います。
「体調が悪いなら休んでください」だけでは済まない現実
ここまでなら、安全教育として非常にきれいな話です。
「体調が悪ければ申告してください。無理をせず休みましょう」
もちろん原則はその通りです。
ただ、実際に中小の運送会社で配車をしていると、それだけでは済まない場面があります。
弊社でも、すでに荷物を積み込んだ後にドライバーの体調が悪くなったことがあります。
問題は、代わりのドライバーがいなかったことです。
積んでいる荷物をどうするのか。今日届ける予定の荷物を誰が運ぶのか。荷主にはどう説明するのか。
そのとき私は、「積んでいる荷物だけは何とか降ろしてきてほしい」とお願いしたことがあります。
今振り返っても、これが安全管理として理想的な対応だったとは思っていません。
しかし、これが中小運送会社の現場で実際に起こる葛藤でもあります。
安全を考えれば乗務させない。一方で、代わりのドライバーはいない。荷物はすでに積んでいる。納品先では荷物を待っている。
運行管理や配車をしていると、このような「原則は分かっているけれど、現場をどう回すのか」という問題に直面します。
安全に運転できないなら、運行させない
ただし、ここには越えてはいけない一線があります。
疾病、疲労、睡眠不足などによって安全な運転ができないおそれがある状態なら、運行を優先するわけにはいきません。
「この荷物だけだから」
「近い現場だから」
「あと一件だから」
そう考えたくなる気持ちは、配車をしている私にも分かります。
しかし、その一件の途中で事故を起こしてしまえば、荷物を届けるどころではなくなります。
だから本来考えなければならないのは、体調不良を申告したドライバーに無理をさせる方法ではありません。
一人欠けても運行をどう組み替えるのかを、会社側が考えておくことです。
代替できるドライバーはいるのか。積んでいる荷物を別車両へ積み替えられるのか。協力会社へ依頼できるのか。荷主へ時間変更を相談できるのか。
点呼で異常を発見する仕組みを作るなら、異常が見つかった後の仕組みまで作らなければ、本当の意味での安全管理にはなりません。
「正直に言ったら仕事を外される」では申告できない
会社側がもう一つ気を付けたいのが、ドライバーが体調不良を言いやすい雰囲気になっているかどうかです。
たとえばドライバーが「今日は少し体調が悪いです」と申告したとき、
「今日忙しいのに困るわ」
「またか」
「それくらいで休むのか」
という反応を毎回していたらどうでしょう。
次から言わなくなる可能性があります。
これは車両の異常報告とまったく同じです。
異常を報告した人が責められる会社では、異常が表に出てきません。
点呼で「体調は大丈夫ですか?」と聞くだけではなく、本当に「大丈夫ではありません」と答えられる環境になっているか。
管理者側はここまで考える必要があると思います。
自動点呼があってもコミュニケーションは必要
自動点呼を導入すると、点呼業務の一部を機械に任せられるようになります。
弊社でも実際に使っているので、その便利さはよく分かります。
ただし、「自動点呼を導入したから、ドライバーの状態確認は機械に任せればいい」という話ではありません。
普段からドライバーと接しているからこそ、
「今日はいつもより元気がないな」
「最近かなり疲れているように見える」
「いつもと様子が違うな」
と気付けることがあります。
自動化できるところは自動化する。一方で、人にしか分からない部分は人が見る。
この両方が必要だと、実際に自動点呼を使うようになって感じています。
点呼の目的は「異常なし」の記録を作ることではない
点呼記録に毎日「異常なし」が並んでいると、管理する側としては安心します。
でも、本当に毎日全員が完全に「異常なし」なのでしょうか。
少し寝不足の日もあるでしょう。体調がいまひとつの日もあります。仕事や家庭の事情で疲れていることもあります。
大切なのは、毎日「異常なし」という記録を作ることではありません。
異常がある日に、その異常をきちんと見つけることです。
そして異常が見つかったら、必要に応じて運行を変更する。
ここまでできて初めて、点呼が事故防止の仕組みとして機能します。
点呼と配車は別々に考えられない
私は長年配車をしてきましたが、点呼について考えると、最終的には配車の問題に行き着くと感じています。
点呼で体調不良を見つけても、
「代わりがいないから行ってもらうしかない」
となれば、点呼で異常を見つけた意味が薄れてしまいます。
だから安全管理を本気で考えるのであれば、点呼だけを改善しても十分ではありません。
人員配置、配車、協力会社との関係、荷主との連絡方法まで含めて考える必要があります。
これは簡単な話ではありません。
弊社でも完全にできているわけではありませんし、人手不足の中で毎日配車をしていれば、理想通りにいかないことはいくらでもあります。
それでも、「点呼をやっているから大丈夫」ではなく、
点呼で異常が見つかったとき、実際に運行を変えられる会社になっているか。
そこまで考えることが、これからの運行管理には必要だと思います。
今月のドライバー教育として覚えてほしいこと
今回の記事で特に覚えてほしいのは、次の5点です。
- 点呼はアルコールチェックだけをするものではない。
- 体調不良、疲労、睡眠不足など、安全運転に不安がある場合は早めに申告する。
- 「仕事に穴を開けたくない」と無理をして運転しない。
- 管理者は体調不良を申告しやすい環境を作る。
- 点呼で異常が見つかったときに運行を変更できる体制まで考えておく。
自動点呼などの新しい仕組みを導入することも大切です。弊社でも実際に導入し、以前より確実にできるようになった部分があります。
しかし、点呼の本質は機械が新しくなっても変わらないと思います。
今日、このドライバーが安全に運転できるのか。
異常があれば、それを会社へ伝えられるのか。
そして会社は、その情報を受けて本当に運行を変更できるのか。
点呼を「毎朝やらなければならない作業」で終わらせず、事故を起こさないために運行を止めたり変えたりできる仕組みにする。
4月のドライバー教育を機会に、自社の点呼が本当に機能しているのか、一度見直してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
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