全国の運送業経営者の皆様、本日もお疲れ様です。
これから冬を迎えるにあたり、雪道や凍結路での事故防止は運送会社にとって最重要課題の一つとなります。
今回は、私が過去に現場で体験し、今でも忘れることができない「冬道の恐ろしさ」と、そこから学んだ経営者としてのコストに対する考え方についてお話しします。
1. 新品のスタッドレスタイヤが「無力」になった瞬間
かなり昔のことですが、冬の峠道を走行していたときのことです。 対向車線を走ってきた軽トラックが、すれ違いざまにパッシングをしてきました。
「何だろう?」 と違和感を覚えながら走り続けると、その先の上り坂で路面が完全に凍結(ブラックアイスバーン)していました。
私のトラックは「新品のスタッドレスタイヤ」を装着していましたが、氷の上では全くグリップせず、上り坂の途中で空転し、そのままスリップ。ブレーキを踏んでも車はコントロールを失い、思うように止まりませんでした。
幸いにも後続車がいなかったため、その場の状況に合わせてなんとか体勢を立て直し、慎重に引き返すことで事なきを得ました。大きな事故にならなかったのは、自分の技術ではなく、ただ単に「運が良かっただけ」です。
2. 「安全装備を入れたから大丈夫」という経営者の思い込み
この恐怖の経験から、私の考え方は根本から変わりました。
「新品のスタッドレスタイヤを履かせているから大丈夫だろう」 多くの経営者や運行管理者がそう思いがちですが、大自然の猛威や物理の法則の前では、どれだけ最新の安全装備も無力になる瞬間があります。
本当に事故を防ぐためには、ハード(タイヤやチェーン)に頼るだけでなく、「危険なルート(峠道など)を避け、安全なルートを選択する」というソフト面の対策が絶対に必要です。
具体的には、多少の高速料金がかかったとしても、除雪や融雪剤の散布が行き届いている「高速道路を積極的に利用させること」です。
3. 「冬の高速代」はコストではなく、会社を守る保険
運送業界では、少しでも利益を出すために「高速代を削って下道を走れ」と指示を出す会社がいまだに存在します。
しかし、その数千円、数万円の高速代をケチって峠道に入り、もしトラックがスリップ事故を起こしたらどうなるでしょうか。
- 車両の莫大な修理費用(または廃車)
- 積荷の破損による損害賠償と荷主からの信用失墜
- 通行止めを引き起こしたことによる社会的ダメージ
- そして何より、ドライバーの命の危険
さらに、事故をきっかけに行政の監査が入り、「無理な運行指示を出していなかったか」と運行管理体制の不備を突かれれば、最悪の場合は車両停止処分などの行政処分に直結します。
高速道路代は確かに目先のコストですが、事故によって失う数百万〜数千万円の損失や会社の存続リスクを考えれば、「最も安い保険料」だと言えます。
4. まとめ:高速代は「原価」として荷主に請求する時代
運送会社にとって最も大切なのは、荷物を無事に届けることだけでなく、「ドライバーが無事に帰ってくること」です。私自身、あの日のスリップ体験を通じて「安全に勝る利益はない」ということを強く心に刻みました。
ただし、高速代の負担をすべて運送会社が被って赤字になってしまっては、会社が潰れてしまいます。
だからこそ、冬場の高速道路利用を前提とした「適正原価」を算出し、それを荷主に理解してもらい、運賃(または実費の附帯料金)としてしっかり収受する交渉が必要なのです。
これから冬を迎える地域で運行される皆様も、「自分は大丈夫」と思わず、安全第一の運行ルート設定と、それを支える運賃交渉を進めていただければと思います。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
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