運送業の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。
今日は、実際に私の会社で起きた
「運賃据え置き契約」を巡るリアルな交渉の話です。
もし今、あなたの手元に「運賃据え置き」の契約書が届いているなら、ハンコを押す前に必ずこの記事を最後まで読んでください。
実際の出来事をベースにしていますが
企業名や条件の一部は特定を避けるため。秘匿・変更しています
① 突然送られてきた「契約更新」の書類
ある日、長年取引のある某大手元請け企業から「契約更新」という名目で新しい契約書が送られてきました。 内容を確認した私は、思わず目を疑いました。そこには堂々と、以下の条項が記されていたのです。
- 高速料金や燃料サーチャージは「運賃に含む(コミコミ)」
- 運賃は「据え置き」
実はこの取引先、かなり前に運賃がガクッと下げられて以来、こちらが何度交渉してものらりくらりと躱され、ずっと運賃が据え置かれたままになっていた相手でした。
② 法律と逆行する内容。「これは実質的な値下げだ」
現在、国土交通省の行政指導やトラック新法の流れでは、「基本運賃」「燃料サーチャージ」「高速料金などの実費」は明確に区別して契約・請求することが強く求められています。それにもかかわらず、時代錯誤な「コミコミ条項」のまま。
さらに、ここ数年間で何が起きたか。 燃料費は高騰し、最低賃金は上がり続け、物価も上昇しています。この状況下で「運賃据え置き」というのは、現状維持ではありません。会社の利益を削り取る「実質的な値下げ」であり、適正運賃の収受義務に違反する可能性が高いと私は判断しました。
もっとも相手は大手で社内に法務部があり、その契約が危ういのは当然知ってるはずなんですが、バレなきゃ問題ない意識なのかもしれません。
③ 元請けの常套句「運賃交渉は別の機会で」
すぐさま元請けの担当者に電話を入れ、これらの疑問をぶつけました。 すると、担当者からはこんな言葉が返ってきました。
「今回はあくまで『契約更新』の手続きなので、運賃交渉についてはまた別の機会で行いましょう」
……経営者の皆様なら、この言葉の裏にある「罠」がお分かりですよね。 ここで一旦ハンコを押してしまえば、「双方が現在の条件で合意した」という法的な証拠が完成します。その後で「別の機会」の交渉など、行われるはずがないのです。その後の運賃交渉は可能性低いです。
彼らは値下げ交渉の場合はノリノリで訪問してくるんですが(笑)
④ 行政書士として、そして経営者としての「最後通牒」
私は腹を括り、相手に明確なこちらの意思を伝えました。
「今の時代、高速料金や燃料サーチャージを運賃に含める(コミコミにする)条項は、お互いにとってコンプライアンス上の大きなリスクになります」 「コストが高騰する中での運賃据え置きは、原価割れを引き起こす可能性があり、到底受け入れられません」 「私は行政書士でもあります。この法的リスクを孕んだ内容の契約書に、サインすることはできません」
⑤ 「無理に相手にしていただかなくても大丈夫です」
そして最後に、元請けに対してこう告げました。
「弊社のような売上規模の小さい会社は、無理に相手にしていただかなくても大丈夫です。そちらで条件が整理され、適正な形になったら、またご連絡ください」
結果として、私は今回の契約書へのサインを拒否(見送り)しました。 仕事が一つ減るかもしれません。しかし、会社とドライバーを守るためには、「利益の出ない、しかも法的にグレーな仕事」からは勇気を持って撤退しなければならない時があるのです。
まとめ:断る勇気は「原価計算」から生まれる
大手の元請けに対して「NO」と言うのは、本当に勇気がいることです。 私自身、決して強気な性格だから言えたわけではありません。「自社の適正な原価(コスト)」と「最新の法律」という確固たる裏付けとなる数字を持っていたから、冷静に「これ以上は無理だ」と判断できたのです。
どんぶり勘定のままでは、「仕事を失う恐怖」に負けて、不当な契約書にハンコを押してしまいます。 拙著『【トラック新法対応】「お願い」する運賃交渉を、今日で卒業する本。』でもお伝えしていますが、「断れる数字」を持つことこそが、最強の交渉術なのです。
「元請けからの契約書にハンコを押すのが怖い」経営者様へ。
「送られてきた契約書の内容が、自社に不利なものになっていないか不安」 「断りたいが、どういうロジックで反論すればいいか分からない」
そんな時は、自らも現場で元請けと戦い、法律を武器にする現役の行政書士にご相談ください。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。
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