運送業の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。
以前の記事では、私が過去に経験した「輪止めをしなかった結果、無人のトラックが坂道を下って激突した」という、背筋の凍る実体験をお話ししました。
今回はその続きであり、さらに現実的で恐ろしい「お金と保険」の話をします。 もし、あの無人トラックが他人の車や家に突っ込んでいたら、保険は使えるのでしょうか?
1. 結論:輪止めをしていないと、保険は「出ない可能性」がある
まず結論から言います。 輪止めをしていなかった場合、事故の内容によっては保険会社から「重大な過失」と判断され、保険金が大幅に減額されるか、最悪の場合は一切支払われない可能性があります。
特に、無人状態でトラックが動き出した「自走事故(クリープ現象やサイドブレーキの甘さ)」は、保険会社の調査とチェックが非常に厳しくなります。
2. 保険会社が「無人トラック事故」で必ず見る3つのポイント
事故調査において、保険会社が見るポイントは非常にシンプルです。
- サイドブレーキは確実にかかっていたか?
- 傾斜のある場所だったか?
- 輪止めなどの安全措置を確実にしていたか?
この中で、「輪止めなし」はかなり致命的な事実として扱われます。
なぜ「輪止めなし」がそこまで問題になるのか。理由はたった一つです。 「輪止めさえしていれば、防げた事故だから」です。
- 坂道やわずかな傾斜である
- 荷降ろし中で車両が無人になる
- サイドブレーキ「のみ」で放置した
この状態で車両が動いた場合、プロのドライバーとして当然行うべき安全措置を怠ったとして、「重大な過失があった」と判断されやすくなるのです。
3. 保険ごとのリアルな扱い(対物と車両の違い)
では、具体的にどの保険がどうなるのか。実務的な扱いの違いを解説します。
■ 対物賠償保険(相手への損害) 被害者保護が優先されるため、基本的には支払われます。 ただし、運送会社側に「重大な過失」があると認定された場合、保険金が減額されたり、一度保険会社が被害者に支払った後で、運送会社に対して求償(請求)が来るケースもあります。
■ 車両保険(自分のトラックの修理代) ここが一番危険です。 自分自身のトラックの損害については、「重大な過失」があると認定されれば、減額または不払いの可能性が非常に高くなります。
特に【輪止めなし】+【傾斜あり】+【無人放置】という条件が重なると、普通に「保険が出ない」ケースに該当します。
《現場ベースでの判断イメージ》
- 平地 + ブレーキ確実 = セーフ寄り
- 軽い傾斜 + 輪止めなし = グレー(減額リスクあり)
- 明確な坂 + 輪止めなし = アウト寄り(不払いリスク大)
4. 行政書士の現場で見る“本当に怖い代償”
問題は、単なる事故そのものではありません。 「想定外の莫大な自己負担」が会社にのしかかることです。
- 対物賠償の請求(数百万円〜数千万円)
- トラックの車両損害(全額自己負担)
- 事故を起こしたことによる取引先からの信用低下
- 最悪の場合、今後の契約打ち切り
たった一つの「輪止め忘れ」が、これだけの連鎖を引き起こし、運送会社の経営を直撃します。
「もしこの無人トラックが人にぶつかって重傷を負わせた場合、あるいは車輪が脱落した場合は、国への重大事故報告が義務付けられます。報告義務の境界線についても必ず把握しておいてください。」
5. 「無人トラックは保険が出ない」の正しい理解
現場でよくある誤解を解いておきます。 「無人だから保険が出ない」わけではありません。
❌ 無人 = 保険が出ない ⭕️ 安全措置をしていない無人車両 = 保険が削られる
つまり、本質は「輪止めをしているかどうかが、天国と地獄の分かれ道になる」ということです。
まとめ:経営者が今すぐやるべき対策
輪止めをサボっただけで、数百万円単位の自己負担になる可能性がある。これは単なる現場のミスではなく、会社の存続に関わる「経営リスク」です。
現場のドライバー任せにせず、今すぐ以下の対策を会社ルールとして徹底してください。
- 輪止めを「必須ルール」にする(就業規則等への明記)
- 坂道・傾斜では必ず使用させる
- 荷降ろし等で車両を離れる時は、短時間でも必ず設置させる
「出ないリスクが高い」という現実をドライバーにもしっかりと共有し、事故の芽を摘み取ってください。
「保険が下りない車両修理費の自腹は、運送会社の利益を簡単に吹き飛ばします。自社の事故コストがどれだけ経営を圧迫しているか、無料のツールで一度可視化してみてください。」
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。
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