運送会社の経営者の皆様、日々の経営、本当にお疲れ様です。

「また軽油価格が上がったか…」  「このままでは、走れば走るほど赤字だ」

暫定税率の廃止で一息つけると思った矢先にオイルショック状態。現状毎月の燃料費の請求書を見て、頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。ご存知の通り、軽油価格は国際情勢の影響を受けやすく、2021年以降、高止まりが続いています  。

燃料費は、運送原価の中でも大きな割合を占める「変動費」です  。このコストをいかにコントロールするかは、会社の利益に直結する、待ったなしの経営課題です。

さらに、2025年に可決された通称**「トラック新法」(改正貨物自動車運送事業法)**により、私たち運送事業者は、自社の「適正な原価」に基づいた運賃を収受することが、努力義務から「法的義務」へと変わろうとしています  。

もはや「お願い」するだけの運賃交渉は通用しません 。コスト削減の努力を尽くした上で、その「適正な原価」を荷主に堂々と提示し、交渉する時代が来たのです  。

本日は、この厳しい時代を生き抜くために、今すぐ取り組むべき「燃料コスト削減の具体策」をご紹介します。


🚚 具体策1:自社の「実燃費」を正確に把握する(原価計算の第一歩)

まず、最も重要なことは**「自社のトラックが、1km走るのに、燃料費がいくらかかっているのか」**を正確に知ることです  。

長年の「勘」で運賃を決めてしまっていませんか? しかし、車両価格やタイヤ代、そして燃料費が高騰し続ける今、その「勘」だけでは、気づかぬうちに原価割れを起こしている可能性があります  。

  • 車両ごと(大型、中型、小型など)の平均燃費
  • 「1kmあたりの燃料費」

これを算出することが、あらゆるコスト削減と運賃交渉のスタートラインです。まずは自社の「真実の数字」と向き合うことから始めましょう  。

🚚 具体策2:エコドライブの徹底と運行管理の最適化

基本的なことですが、燃料コスト削減において最も即効性があるのが、日々の運行の見直しです。

  • エコドライブの徹底:
    • 急発進、急加速、急ブレーキの禁止。
    • 不要なアイドリングストップの徹底。
    • 法定速度の遵守(速度超過は燃費を著しく悪化させます)。
  • 運行管理の最適化:
    • 運行ルートの見直し(最短距離、渋滞の回避)。
    • 実車率の向上(「帰り便」を安易に原価割れで受けるのではなく、適正な運賃での獲得を目指す)  。

これらの地道な取り組みが、月単位、年単位で大きな燃料費削減につながります。

🚚 具体策3:車両の適切なメンテナンス

車両のコンディションも燃費に大きく影響します。「標準的な運賃」の原価計算においても、オイル費、タイヤ費、車検・修理費は変動費として考慮されています  。

  • タイヤの空気圧の適正化: 空気圧が低いと燃費が悪化します。定期的な点検を義務付けましょう。
  • エンジンオイルの定期交換: オイルの劣化は燃費悪化につながります  。
  • エアクリーナーの清掃・交換: 目詰まりは燃費を悪化させる原因となります。

安全運行の確保はもちろん、燃料コスト削減のためにも、車両メンテナンスは不可欠な投資です。

🚚 具体策4:燃料サーチャージの適正な導入・交渉

燃料費は、自社の努力だけではコントロールできない外部要因の最たるものです  。このリスクを自社だけが背負う必要はありません。

燃料サーチャージは、国土交通省が定める「標準的な運賃(料金)」 や、改正されるトラック新法における「書面交付」の記載事項としても認められている、正当な費用です  。

改正法では、運賃・料金とは別に「燃料サーチャージ」を明記した書面の交付が義務付けられます  。

【書面交付の記載事項例】 

  • ① 運送の役務の内容及び対価
  • ② 運送の役務以外の役務(荷役、附帯業務等)の内容及び対価
  • ③ その他特別に生じる費用に係る料金(例:有料道路利用料、燃料サーチャージなど)

正直、導入はかなり難しいかもしれませんが、軽油価格の基準額と、価格変動に応じたサーチャージの計算方法が提示できる準備があるなら契約に盛り込む等交渉に挑みましょう。

🚚 具体策5:「適正原価」に基づき、運賃交渉を行う

エコドライブやメンテナンス(削減努力)を行っても、なお吸収しきれない燃料費の高騰分は、運賃に「転嫁」するしかありません。

「お願い」や「愚痴」では、荷主は納得しません 。交渉のテーブルで必要なのは、客観的なデータです  。

  1. 自社の「適正原価」: 具体策1で算出した「1kmあたりの燃料費」を含む、運行ごとの正確な原価計算書。 
  2. 国の「基準」: 国土交通省が示す「標準的な運賃」は、ドライバーの賃金改善やコンプライアンス確保を前提とした適正な原価を基に算出されています  。
  3. トラック新法の「後押し」: 新法では、国が示す「適正原価」を下回る運賃での契約が禁止される方向です  。

これらの「武器」を持って、「この燃料費高騰の中で、御社の物流を安定的に維持するためには、これだけの原価が必要です」と、自信を持って交渉することが、これからの経営者には不可欠です  。


まとめ

軽油価格の高騰という厳しい現実は、すぐには変わりません。私たち運送事業者にできることは、2つです。

  1. 徹底した「削減努力」(エコドライブ、メンテナンス、運行管理)
  2. 客観的データに基づく「適正な転嫁」(燃料サーチャージ、運賃交渉)

「トラック新法」は、私たちに厳しい原価管理を求めると同時に、「適正な原価」を収受する権利を法的に後押ししてくれるチャンスでもあります  。

まずは、自社の「1kmあたりの燃料費」を算出するところから、その第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。

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