運送業の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。

前回の記事で解説した通り、2026年1月1日に施行された「中小受託取引適正化法(通称:取適法、旧・下請法)」により、これまで運送業界で“当たり前”のように行われてきた悪しき取引慣行に、明確にメスが入りました。

  • 一方的な運賃の据え置き
  • 長すぎる支払サイトや手形払い
  • 無償の付帯作業(タダ働き)
  • 振込手数料の押し付け

こうした問題に対して、法律側が「それは違法です」と荷主に突きつける時代になりました。
しかし、いくら法律が味方になっても、「契約書を読めない経営者」は会社を守れません。

荷主から送られてきた契約書に、中身も見ずにホイホイとハンコを押してしまえば、せっかくの法律の盾も台無しです。

今回は、運送業の経営者が荷主との契約時に絶対に血眼になって確認すべき「5つの重要ポイント」を、現場目線で分かりやすく解説します。

大前提:「契約書」はここを見

荷主から送られてきた契約書を、なんとなく「いつも通りでいいか」とスルーしていませんか?
正直読み込むのはめんどくさいです。

実は、運送会社にとって危ういな文言ほど、“普通の文章”の中に紛れ込んでいます。

契約書の中で、経営者が最も警戒して読むべきなのは「本文(条項)」です。

ここに支払条件、責任範囲、付帯作業の扱い、運賃変更ルールが細かく書かれています。

具体的にどこの条文をどうチェックすべきか、新法(取適法)のルールを踏まえて見ていきましょう。

① 「付帯作業」が曖昧になっていないか

今回の取適法で、めちゃくちゃ重要になるポイントです。
「ついでに検品もお願い」「リフト空いてないから手下ろしで手伝って」「まだ荷物できてないから3時間待機して」……長年、無料でやるのが当たり前になっていた部分です。

しかし取適法では、荷役、倉庫作業、ラベル貼りなどの付帯業務について、「契約内容やその対価(追加料金)を明確にすること」が厳しく求められます。

無償の付帯作業を強要することは、『不当な経済上の利益の提供要請』や『不当な給付内容の変更』として、バッチリ違反事例に指定されています

  • 🚨 ここをチェック! 契約書に「どこまでが運送業務なのか」「付帯作業の有無」「追加料金の取り扱い」が明記されているか確認してください。もし「運送に伴う付随業務一式を含む」なんて曖昧な一言で片付けられていたら、後からタダ働きをさせられる原因になります。

「取適法での保護以前に、令和7年4月からはトラック法改正により、すべての運送で『契約内容の書面交付』自体が絶対の義務になります。書面なしは即法令違反の時代です。」

② 支払条件は「60日以内」になっているか

取適法では、原則として「運送が完了した日から60日以内の支払い」が義務付けられています。

  • 🚨 ここをチェック! 現場でよくある「月末締め・翌々月末払い」という条件。
    一見普通に見えますが、月初の取引(例:5月1日の運送完了分)だと、支払いが7月末になり、なんと「約90日」もかかってしまい、60日ルールを完全にオーバーします!

    以前、〇〇万円超えたら月末締め・翌々月末払いと言われたことがあり、そのお仕事は丁重にお断りした記憶があります。

    これらは2026年以降、一発アウト(違法)になる可能性が極めて高いです。60日を超過した場合、荷主側には年利14.6%の遅延利息の支払い義務が発生します。

③ 「手形払い」の文言が残っていないか

古い契約書を使い回している会社では、未だに「代金は手形による決済とする」「電子記録債権による支払い」という文言が残っています。

  • 🚨 ここをチェック! ここが最大の要注意ポイントです。
    2026年の取適法では、対象となる取引での「手形払い」が【全面禁止(一発アウト)】になります!
    「商習慣だから」は一切通用しません。最も安全で合法なのは「銀行振込による現金払い」です。古い手形決済の文言が残っていたら、必ず変更を求めてください。

④ 「運賃改定の協議ルール」があるか(無視は違法!)

これまでは、燃料費や人件費が上がっても、荷主に「昔からこの運賃だから」と据え置かれて涙を呑むケースが多々ありました。 しかし取適法では、新しく「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」という強力なルールができました。社長が「運賃改定の協議をしたい」と求めたのに、荷主が無視したり先延ばしにしたりすること自体が違法行為になります。

  • 🚨 ここをチェック! 契約書に「価格改定は、コストの変動等に応じて甲乙協議の上決定する」などの文言があるか確認してください。この“協議する仕組み”が書かれているだけでも、荷主を強制的に話し合いのテーブルにつかせる絶対の防衛線になります。

⑤ 「振込手数料」が勝手に引かれていないか?

毎月の入金で「あれ、また数百円引かれてる…(振込手数料の負担)」という地味な理不尽。

  • 🚨 ここをチェック! 2026年の取適法からは、合意の有無にかかわらず、発注者が勝手に振込手数料を下請けに負担させて差し引くことは、一発で「減額(違法)」になります!
    契約書に「振込手数料は乙(運送会社)の負担とする」という記載がないか確認し、今後は「自社負担(荷主負担)に統一」してもらい、きっちり満額を振り込んでもらいましょう。

まとめ:契約書を読める経営者が、会社とドライバーを守る

「荷主に文句を言ったら、仕事を切られるかもしれない」 そんな重苦しい空気が現場を支配し、結果として業界に限界を超えた無理が積み重なってきました。2026年の取適法は、その最悪の流れを変えるための歴史的な大転換点です。

もし嫌がらせで仕事を切られても、法律では「報復措置の禁止(仕返しの禁止)」が徹底されており、行政の指導が厳しく入ります。

これからの時代、「知らなかった」「昔からの慣習だから」では済まされません。 契約書をしっかり読み解き、不当な契約には「NO」と言える経営者になること。それこそが、会社の利益と、命がけで走ってくれるドライバーを守る最強の武器になります。

新しい法律という「盾と剣」を持ち、対等なビジネスパートナーとして荷主と向き合っていきましょう!

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。

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