これから運送業を始めようとお考えの皆様、お疲れ様です。

運送業の新規許可のご相談で、今でもよく経営者の方から聞く言葉があります。 「とりあえず、トラック5台集めれば緑ナンバーの許可は取れるんですよね?」

ですが、実務ベースで正直に言わせていただきます。 その時代は、すでに完全に終わっています。

近年は「2024年問題」「燃料費高騰」「ドライバー不足」、そして「相次ぐ法改正による規制強化」により、新規許可のハードルは劇的に上がっています。 今は単なる「緑ナンバーの取得」ではなく、「コンプライアンス経営を維持できる体力がある会社か」を厳格に見られる時代になっています。

免許更新制が始まるとより厳格な審査になると推測されます。

今回は、運送業の新規許可を考えている方が、最初に直視すべき「5つの厳しい現実」をお話しします。

現実①:トラックは「5台ある」ではなく「維持できるか」

一般貨物自動車運送事業では、原則5台以上の事業用車両が必要です。 しかし重要なのは「とりあえず5台かき集めること」ではありません。最近は車両価格も異常に高騰しており、ローンやリース代、修理費、タイヤ代などを含めると、想像以上に固定費が重くのしかかります。 稼働しない車両が1台でもあると、一瞬で資金繰りがショートします。

現実②:場所選びを甘く見ると「完全に詰む」

ここは本当に重要です。「空き地があるから車庫にしよう」という素人判断は命取りになります。

  • よくある詰みポイント
    • 市街化調整区域や「農地」である
    • 前面道路の幅員が足りない(※大型はここで止まるケースが非常に多いです)
    • 車庫の動線が確保できない

実は私自身も、過去に営業所を開設しようとした際、行政書士に「その場所は無理です」とサジを投げられ、自力で役所と交渉して通した経験があります。場所選びを間違えると、数ヶ月の計画がすべて白紙になります。

現実③:資金要件は昔の「何倍」も厳しい

「昔は500万円くらいで始められた」という武勇伝を聞くこともありますが、忘れてください。

現在は資金要件が極めて重くなっています。車両、人件費、燃料費、保険、家賃などを含め、実務上は「1,500万円〜2,500万円前後」の自己資金を求められるケースも珍しくありません。

しかも恐ろしいのは、「残高証明は“2回”確認される」という点です。申請時と、数ヶ月後の審査終盤です。この間に運転資金を動かして基準を下回ると、許可は下りません。

現実④:人的要件「後で考える」は通用しない

「とりあえず許可を取って、運行管理者は後で探すよ」 これも絶対に通用しません。運行管理者と整備管理者といった「人的要件」が申請の時点で揃っていないと、そもそも土俵にすら上がれません。

現実⑤:役員の「法令試験」を軽く見ると落ちる

新規許可では、常勤役員による法令試験があります。これを「まあ常識問題でしょ」と甘く見る方がいますが、普通に落ちます。 実務未経験、丸暗記だけ、片手間の学習では、今の試験は突破できない厳しい内容になっています。


■ さらに重くなる「令和7年法改正」の現実

ここからが本題です。これから新規参入する会社は、最初から「超・厳格なコンプライアンス対応」を求められます。

  • 運送契約の書面交付義務(2025年4月〜) 運賃、待機料金、附帯作業などを明確化した書面を交わすことが義務化されます。「いつもの口約束の感じで」は法令違反になります。
  • 実運送体制管理簿の作成義務 元請として仕事を受ける場合、「誰が実際に運んだのか」を管理する義務が強化され、怠れば行政処分リスクが伴います。
  • “安すぎる運賃”は命取り 「最初は安く仕事を取って…」という戦略は、今の燃料高・人手不足の時代では通用しません。最初から適正原価を意識した運賃設定が必要です。

「令和7年の法改正により、『書面がない=即法令違反』の時代に突入します。新規参入するなら、最初からこのルールに対応できる体制を作っておかなければなりません。」


■ まとめ:許可を取った「後」が本当の地獄(本番)

運送業の新規許可は、「許可を取ること」がゴールではありません。 本当に大変で重要なのは、「許可後に生き残れるか」です。

新規許可後には、必ず行政の「巡回指導」がやってきます。ここで点呼記録の不備や過労運転が発覚して最低評価(E判定)を受ければ、その後の増車や営業所新設はストップします。 また、コンサルに言われるがまま「Gマーク(安全性優良事業所)」を最初から目指すのも危険です。経営と資金繰りに余裕がない段階で維持コストのかかるGマークに手を出すと、現場が崩壊します。

今後は特に、法令遵守、適正運賃、管理体制を軽視した会社から退場していく時代です。 「とりあえず始める」ではなく、「維持できる形で始める」ための現実的な計画作りを、実務を知る行政書士にご相談ください。

「許可を取った後に待ち受ける巡回指導で、何を見られるのか? 稼働を止めるような行政処分を受けないために、こちらの無料ツールでどんな準備が必要か確認しておいてください。」

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。

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