運送会社の経営者の皆様。本日もお疲れ様です。

「健康診断? 全員受けさせたからウチは大丈夫だよ」 そう言って、病院から届いた診断結果を、中身も見ずに放置していませんか?

はっきり言います。それは「金をドブに捨てている」のと同じであり、コンプライアンス上も「不十分(指導対象)」**です。

健康診断は「受けること」がゴールではありません。 結果に基づいて、「このドライバーは安全に運転業務ができるのか?」を判断し、対応することこそが、会社に課せられた「安全配慮義務」の正体です。

今回は、多くの会社が見落としている**「医師による乗務判定コメント(意見聴取)」**の重要性と、結果が届いた後に管理者が必ずやるべき「事後措置」について解説します。


最重要!「運転業務に耐えられるか」のコメントをもらえ

健康診断の結果票には、血圧や肝機能などの数値が並んでいますが、運行管理者が一番見なければならないのはそこではありません。

医師による**「総合判定(就業判定)」のコメント**です。

労働安全衛生法では、健康診断の結果、異常の所見があった従業員について、**「医師から就業上の措置に関する意見を聴かなければならない」**と定められています(第66条の4)。

つまり、ただ「血圧が高いね」で終わらせるのではなく、医師に対して以下の質問の答え(コメント)をもらい、記録に残す必要があるのです。

  1. 通常勤務でよいか?(今のまま乗務させて大丈夫か)
  2. 就業制限が必要か?(長距離はダメ、夜間はダメ、等)
  3. 要休業か?(直ちに乗務を降りて治療すべきか)

もし、お使いの健診機関の結果票にこの「就業区分(判定)」の欄がない場合は、別途、医師に確認してコメントを記入してもらう必要があります。 監査でも、「健診は受けさせているが、医師の意見(就業判定)が確認できない」として指摘されるケースが増えています。


「プライバシー」を言い訳にしてはいけない

「健康診断の結果は個人情報だから、会社が勝手に見ちゃいけないと思って…」 という経営者がいますが、これは間違いです。

運送会社には、ドライバーの健康状態を把握し、安全な運行を確保する義務があります。 就業規則に**「健康診断の結果を会社に提出すること」**を明記し、堂々と回収・確認してください。

もちろん、知った情報を飲み会のネタにするのはアウトですが、「安全管理のために確認する」ことは正当な業務行為です。


「要再検査」の放置は、事故時の「自殺行為」

医師のコメント欄に**「要再検査」「要精密検査」「要治療」**と書かれているドライバーを、そのまま放置して乗務させていませんか?

もし、そのドライバーが運転中に脳卒中や心臓発作を起こして事故になったら、会社は言い逃れできません。 「医師から危険信号が出ていたのに、無視して乗務させた」として、「安全配慮義務違反」で多額の損害賠償を請求されることになります。また、過労死認定のリスクも跳ね上がります。

管理者がやるべきフロー

  1. 「再受診命令」を出す 口頭だけでなく、「再検査受診勧告書」などを渡し、記録を残す。
  2. 結果(報告書)を提出させる 再検査の結果、「乗務に支障なし」と診断されたのか、あるいは「治療が必要」なのかを確認する。
  3. 就業判定を行う 医師の意見に基づき、必要であれば配置転換(倉庫作業への変更など)や休職を命じる。

無料で使える!「労災二次健康診断」


定期健今回は、定期健康診断の結果を活用して、無料で精密検査(二次健康診断)を受けられる国の制度をご紹介します。 意外と知られていない制度ですが、会社にとってもドライバーさんにとってもメリットが大きいので、ぜひチェックしてみてください。

◆ どんな制度?

定期健康診断(一次健診)で異常の所見があった場合、労災保険を使って**自己負担なし(無料)**で、脳・心臓の状態を詳しく調べる「二次健康診断」を受けられる制度です。

◆ 無料になる条件

一次健診で、以下の4項目すべてに異常の所見(「要再検査」など)があると診断された場合が対象です。

  1. 血圧(高血圧など)
  2. 血中脂質(コレステロール、中性脂肪など)
  3. 血糖(血糖値、HbA1c)
  4. 腹囲またはBMI(肥満)

※「4つすべて」が原則ですが、医師の判断により対象となるケースもあります。

◆ 無料で受けられる内容

労災指定の医療機関で、以下の2つを無料で受けられます。

  • 二次健康診断: 頸部(首)や心臓のエコー検査など(脳・心臓疾患の発症リスクをチェック)
  • 特定保健指導: 医師や保健師による栄養指導、生活指導など

◆ 手続きと利用方法

手続きは非常にシンプルですが、期限に注意が必要です。

1. 一次健診の結果を用意する 異常の所見が書かれた定期健康診断の結果票を用意します。

2. 請求書を作成する 「二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)」という書類に必要事項を記入します(厚生労働省HPからダウンロード、または労働基準監督署で入手可能)。

3. 病院へ行く 「労災指定医療機関(健診給付病院等)」へ、上記1(結果票)と2(請求書)を提出して受診します。 ※窓口での支払いは発生しません。

◆ 注意点

  • 期限: 一次健診を受けた日から3ヶ月以内に請求(受診)する必要があります。
  • 回数: 1年度(4月1日~翌3月31日)につき1回限りです。
  • 対象外: すでに脳・心臓疾患の症状があり治療中の方は、この「予防のための健診」制度は使えず、通常の健康保険(3割負担等)での治療となります。

過労死等の重大な事故を防ぐためにも、対象となるドライバーさんがいらっしゃれば、期限切れになる前に受診を勧めてみてはいかがでしょうか。

※本記事に関するご留意事項 本記事は、運送事業者様の健康管理・安全管理に役立つ情報の提供を目的としています。 二次健康診断等給付の具体的な申請手続きや書類作成の代行については、社会保険労務士の独占業務となります。詳細な手続きのご相談は、顧問の社会保険労務士様、または最寄りの労働基準監督署・医療機関へ直接お問い合わせください。康診断の結果、以下の4項目すべてに「異常の所見」があった場合、労災保険を使って無料で精密検査(二次健康診断)を受けることができます。

まとめ:コメントがあって初めて「健診完了」

健康診断は、「受診」と「事後措置(医師のコメント確認)」でワンセットです。 医師からの**「現在の健康状態なら、乗務に支障はありません」**というお墨付き(コメント)があって初めて、管理者は安心して鍵を渡せるのです。

今すぐ、手元の健康診断結果ファイルを開いてみてください。 そこに「医師のコメント」はありますか? 「要再検査」のまま放置されているドライバーはいませんか?

手遅れになる前に、今すぐチェックを始めましょう。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。

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