運送会社の経営者の皆様、本日も本当にお疲れ様です。
「最大積載量の10%くらいなら、誤差として見逃してもらえる」
運送業界の現場では、昔からそんな噂がまことしやかに囁かれています。
荷主からの「あと少しだけ積んでよ」という圧力。
「一回で運びきらないと利益が出ない」という経営の苦しさ。
その狭間で、「あと数パーセントなら……」と自分を納得させてはいませんか?
今日は、その「甘い期待」がどれほどのリスクを孕んでいるか、専門家の視点からお話しします。
1. 結論:法律に「誤差」という概念はない
まず、残酷な事実からお伝えします。
法律上、「◯%までならセーフ」という規定は1%も存在しません。
道路交通法において、過積載は「最大積載量を超えて車両を運転すること」と定義されています。つまり、**1kgでもオーバーしていれば、その瞬間に「法律違反」**のスイッチが入るのです。
警察の取り締まり現場で厳重注意で済むことが稀にあるかもしれませんが、それはあくまで「運が良かった」だけ。ルールが変わったわけではありません。
2. なぜ「10%ならOK」という誤解が生まれたのか?
実は、この誤解には理由があると言われています。多くの方が、荷物の「大きさ(長さ)」のルールと混同してしまっているのです。
- 長さの制限(2022年改正): 積載物の長さは、車両の長さの**1.2倍(20%増)**までなら許可なしで運べるようになりました。以前はこれが1.1倍(10%増)だったため、現場には「10%(または20%)まではハミ出してもいい」という数字が強く刷り込まれています。
- 重さの制限: こちらは昔も今も**「0%増(1kgもダメ)」**のままです。
「長さが20%まで許されるなら、重さも10%くらいはいいだろう」という思い込み。これが、会社を滅ぼす「勘違い」の正体です。
3. 警察よりも怖い「保険会社」と「荷主への飛び火」
「捕まらなければいい」という考え方は非常に危険です。
もし過積載の状態で事故を起こしてしまったらどうなるか。
保険会社はシビアです。
特に、自社のトラックの修理費(車両保険)や、預かっている荷物の補償(貨物保険)については、「故意に近い重過失(法令違反)」とみなされ、保険金が一切支払われないリスクがあります。
数万円の運賃のために、数千万円の損害を自腹で被る。
そんなギャンブルに、あなたの会社を賭ける価値はありますか?
また、過積載が発覚すれば、荷主に対しても「再発防止命令」などのペナルティが及ぶ可能性があります(荷主勧告制度)。大切なお客様を守るためにも、断る勇気が必要なのです。
4. 過積載の「罰則」段階
念のため、超過割合ごとのリスクも整理しておきます。大型トラックの場合、5割未満でも点数は「2点」です。
| 超過の割合 | 運転手への罰則(大型車) | 経営者・事業所への影響 |
| 5割未満 | 点数2点 反則金4万円 | 初回は警告(繰り返すと車両停止) |
| 5割以上 10割未満 | 点数3点 赤キップ(刑事罰・前科) | 車両停止処分 運行管理者資格の危機 |
| 10割以上 | 点数6点(一発免停) 赤キップ(刑事罰・前科) | 事業停止処分 悪質な場合は即時告発 |
結び:会社を守るのは、あなたの「NO」という勇気
コンプライアンスが厳しく問われる令和の時代において、法令遵守は会社を守る「盾」です 1。
荷主に「あと少し」と言われたとき、この記事を思い出してください。
あなたの会社と、社員の人生を守れるのは、法律でも警察でもなく、経営者であるあなたの判断だけです。
「うちは大丈夫かな?」と少しでも不安になったら、まずは車両の重量管理を徹底することから始めましょう。
正しい知識で会社を守るために。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。
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