運送業の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。

運送事業を拡大し、新たなエリアに拠点を構える「営業所の新設」。これは会社にとって人員確保、売上の飛躍等、大きなチャンスですが、一歩間違えると数千万の投資計画が白紙になる恐ろしいリスクも孕んでいます。

実は私自身、過去に経営者として営業所を開設しようとした際、非常に印象的な経験をしました。 今回は、その実体験を踏まえた「営業所新設のリアルな手順と落とし穴」、そして「顧問の言いなりになってはいけない理由」をお話しします。

1. 専門家の「無理です」は絶対ではない

自社で新しい営業所を構えようと候補地を見つけ、まずは当時の顧問行政書士に相談しました。 そこで資料を見るなり即答されたのが、「その場所での営業所開設は無理です」という言葉でした。

正直、「プロが言うならそういうものか」と諦めかけましたが、どうしても納得できず少し食い下がりました。すると返ってきたのは「じゃあ、ご自身でやってみてください」という冷たい言葉でした。

そこで私は腹を括り、諦めずに自分で動きました。 役所の都市計画課へ直接出向いてヒアリングを行い、用途地域の細かな解釈を確認し、条件の再整理を泥臭く行いました。

結果はどうなったか。 条件を満たす形で、無事に営業所開設が可能と判断され、認可が下りたのです。

この経験から言えることは、「無理」と言われてもそれが絶対ではないということです。運送業の営業所要件は、地域ごとの解釈、役所の運用、細かい条件の組み合わせによって判断が覆るケースが多々あります。

「私がこの時『無理ですと即答する行政書士は絶対に信用しない』と心に誓ったエピソードについては、こちらの記事でも詳しくお話ししています。顧問選びの参考にしてください。」

2. 営業所開設を支える「4つの柱」

営業所の新設は、以下の「4つのハードル」をすべて同時にクリアしなければなりません。

① 場所(施設)

  • 用途地域: 市街化調整区域は原則不可など、非常に厳しい制限があります。
  • 広さ: 営業所は適切な規模(目安10㎡以上)が必要です。
  • 休憩・睡眠施設: 乗務員1人あたり2.5㎡以上の確保が必要です。※「睡眠を与える必要がある運行が発生する場合」のみ適用

② 車両・車庫

  • 台数: 原則5台以上(※要件を満たす必要あり)。(牽引・被牽引はセットで1両カウント)
  • 距離: 車庫は営業所から直線距離で一定範囲内(地域により異なる)であること。
    「※営業所と車庫の許容距離(5km〜20km)は、管轄の地方運輸局や都市(政令指定都市など)によって厳格に定められています」
  • 広さ: 車両と車両、車両と境界線の間に「50cm以上の隙間」が確保できる面積が必要です。

③ 人員

  • 運行管理者: 新設する営業所ごとに有資格者が1名以上必要です。(原則30台ごとに増員)
  • 整備管理者・ドライバー: 計画に沿った人数の確保が必須です。

④ 資金

  • 新設にかかる費用(土地建物、車両、人件費、保険料など)を計算し、「残高証明書」で資金が潤沢にあることを証明する必要があります。(※規模によりますが、目安として2,000万円前後の資金証明が求められることが多いです)

※実際の申請要件は管轄の地方運輸局によって一部異なるため、事前確認が必須です

3. 実務で経営者がハマる「3つの落とし穴」

手続きを進める中で、計画が頓挫しやすいリアルなポイントがこちらです。

  • 落とし穴①:農地問題 見た目がただの空き地でも、地目が「畑」や「田」などの農地はそのまま車庫や営業所として使えません。農地転用の手続きには多大な時間がかかります。
  • 落とし穴②:残高証明は「2回」求められる 資金証明は申請時だけでなく、数ヶ月後の審査終盤にもう一度求められます。この間に運転資金としてお金を動かしてしまい、要件を下回って不認可になるケースが後を絶ちません。
  • 落とし穴③:前の会社の「亡霊(ゴースト)」 居抜き物件や中古のモータープールを借りる際、「前の運送会社が営業所(車庫)の廃止手続きをしていない」と、二重登録とみなされ使用できないケースがあります。

4. 見落としがちな罠「Gマークは後回しでいい」

営業所を新設する際、よくコンサルタントや行政書士から「ついでに新営業所でもGマークを取りましょう」と提案されます。しかし、現場目線で言えば要注意です。

Gマークは会社単位ではなく「営業所単位」で評価されます。新設した営業所でGマークを取るには、新たな帳票管理、教育、安全対策など、凄まじい維持コストと労力がかかります。

営業所新設の直後は、稼働の安定、人員の確保、資金繰りの安定が「最優先」です。この土台がグラグラの段階でGマークまで追うと、現場の管理が中途半端になり、最悪の場合は事故や監査での重大な指摘に繋がります。

Gマークは、経営と現場の回りに余裕が出てから目指すべきです。顧問に言われるがまま「じゃあお願いしようかな」と安易に決断するのは危険です。

「Gマークは維持するのも大変ですが、万が一新設した営業所で重大な違反や行政処分を受ければ、Gマークの取消しだけでなく、全社的な経営危機に直結します。」

まとめ:なぜ無理なのかを突き詰めるのが経営である

営業所の新設は、単なる拠点の追加ではなく「経営判断そのもの」です。

初期投資は数千万円規模になり、固定費も跳ね上がります。だからこそ、「専門家に無理と言われたからやめる」のではなく、「なぜ無理なのか? どうすれば可能になるのか?」を突き詰める執念が、結果を大きく分けます。

「自社の今の体力で、本当に営業所を出すべきタイミングか?」 「役所にダメ出しされた物件だが、本当に突破口はないのか?」

セカンドオピニオンを含め、経営の大きな決断に迷った時は、現場の泥水をすすってきた実務派の行政書士にぜひご相談ください。

【現場のリアル】
営業所を新設すると、稼働開始から3ヶ月〜半年以内に、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(トラック協会)による最初の巡回指導が確実にやってきます。
行政側は、新設拠点が「名義貸し」や「運行管理者の名前だけ借り」になっていないかを最も警戒して見に来ます。
初日から固定電話、点呼記録簿、運転日報が適正に動いている体制を作っておかなければ、手痛い指摘を受けることになります。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に現時点で27年間携わる現役の行政書士。
運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきている経験をもとに、
運送業のリアルな課題や裏話を法律と現場の両面から解説しています。

▼運送業の運賃交渉・契約更新の相談はこちら
【初回無料】現役行政書士が直接回答します[お問い合わせ]

▼運賃交渉で悩んでいませんか?

  • 原価がわからない
  • 運賃を上げられない
  • 荷主に言い返せない

その原因は

原価計算が出来ていないからです。 ノウハウを下記書籍にまとめています。

【Kindle Unlimitedなら¥0で読めます】

[【トラック新法対応】「お願い」する運賃交渉を、今日で卒業する本。]

🎁上記書籍 読者限定の無料ダウンロード特典

「車両価格推移レポート」「最低賃金推移レポート」「運送基本契約書テンプレート」など、実務の武器になる強力なツールを本の中の限定フォームからプレゼントしています!

▼ 【無料】巡回指導セルフチェックExcelのダウンロードはこちら

👉 [https://forms.gle/ZwkF1oKz5DqbG5ML6]

▼【無料配布中】利益を食う「問題車両・ドライバー」を数字で特定!

👉[https://forms.gle/Uu2h8Yfdbt6ouJdS6]