「ながら運転」は会社を潰す!運転中のスマホ使用、厳罰化の現実
運送会社の経営者の皆様、お疲れ様様です。
「地図アプリを見ていただけ」 「配車の連絡が来たから確認しただけ」
事故を起こしたドライバーは、決まってそう言います。 しかし、その「ほんの一瞬」が、ドライバーの人生と、あなたの会社を破滅させる引き金になることを、現場は本当に理解しているでしょうか?
令和元年12月の道路交通法改正により、「ながら運転(携帯電話使用等)」の罰則は劇的に強化されました。 かつてのような「見つかったら反則金を払えばいい」という軽い違反ではありません。場合によっては**「一発免停」、事故を起こせば「懲役刑」**もあり得る重大犯罪です。
今回は、厳罰化された「ながら運転」の恐るべきリスクと、会社として絶対にやってはいけない「管理者のNG行動」について解説します。
「一発免停」の恐怖! 厳罰化された内容を知れ
まず、経営者とドライバーが共有すべきは、改正後の「数字」の重さです。 大型トラックの場合、そのペナルティは経営を直撃します。
1. 保持・注視(手に持っただけ・見ただけ)
通話や画面を注視しただけで、事故を起こしていなくても以下の処分が下されます。
- 違反点数: 1点 → 3点 に引き上げ
- 反則金(大型): 7,000円 → 2,500円 に約3.5倍増
「3点」ということは、過去に軽微な違反(一時停止無視など)が1回でもあれば、**累積で免許停止(免停)**になる可能性があります。
2. 交通の危険(事故・危険運転)
ながら運転をして「危険を生じさせた」場合(事故を起こす、ふらついて他車にブレーキを踏ませる等)は、さらに重くなります。
- 違反点数: 2点 → 6点 (即、免許停止)
- 罰則:1年以下の懲役 または 30万円以下の罰金
- ※反則金制度の適用外となり、すべて**「刑事手続き(赤キップ)」**となります。
つまり、スマホをいじって事故を起こせば、そのドライバーは**「即日、トラックに乗れなくなる」**のです。 人手不足の今、主力ドライバーがいきなり免停になるダメージは計り知れません。
会社を襲う「使用者責任」と「社会的制裁」
ドライバーが自分の免許を失うだけなら、まだ(冷たい言い方ですが)自業自得です。 しかし、業務中の「ながら運転」による事故は、会社に甚大な被害をもたらします。
- 使用者責任(民法715条): 業務中の事故であれば、会社は被害者に対して損害賠償責任を負います。スマホを見ていて死亡事故などを起こせば、賠償額は億単位になることもあります。
- 行政処分: 「会社がスマホ使用を黙認していた」「安全指導を行っていなかった」と判断されれば、運輸局からの監査が入り、車両停止等の行政処分を受ける可能性があります。
- 報道による信用失墜: 「スマホ運転のトラックが列に突っ込む」といったニュースは、世間の注目を集めます。トラックに社名が入っていれば、その瞬間に会社の信用は地に落ち、荷主からの取引停止は避けられません。
その電話、あなたが掛けていませんか? 管理者の責任
ここで経営者・運行管理者の皆様に問いたいことがあります。
「ドライバーの運転中に、業務連絡の電話を掛けていませんか?」
「今どこだ?」「次の現場、変更になったぞ」 急ぎの用件があるのは分かります。しかし、会社から電話が掛かってくれば、ドライバーは「出なきゃ怒られる」という心理から、反射的にスマホに手を伸ばしてしまいます。
もし、その瞬間に事故が起きたら? **「会社がドライバーにながら運転を誘発させた」**と言われても、反論できません。
会社を守るための「3つの具体策」
精神論で「スマホを見るな」と言うだけでは、効果はありません。物理的・仕組み的な対策が必要です。
1. 「運転中は電話に出るな」を徹底する
「運転中の着信は無視し、安全な場所に停車してから折り返すこと」を社内ルールとして徹底してください。そして、管理側も「折り返しが遅い」と怒らないこと。これが信頼関係の第一歩です。
2. AIドラレコの導入(最強の抑止力)
最新のAI搭載ドライブレコーダーの中には、ドライバーがスマホを手に持ったり、視線が下を向いたりした瞬間に**「前方を見てください」「スマホわき見」**と音声で警告し、管理者に動画を送信する機能を持つものがあります(Nautoなど)。 「見られている」という意識こそが、最強の抑止力になります。助成金を活用してでも導入する価値はあります。
3. 「ハンズフリー」も過信しない
「イヤホンマイクならいいだろう」と思っていませんか? 確かに「保持」には当たりませんが、通話に意識を取られれば「漫然運転(安全運転義務違反)」に問われる可能性があります。 複雑な指示やトラブル対応など、頭を使う会話は、ハンズフリーであっても運転中は避けるべきです。
まとめ:その「一瞬」が、会社の寿命を縮める
スマホの画面を見る「2秒間」。時速60kmなら、トラックは約33メートルも進みます。 それは、目隠しをして30メートル走るのと同じです。
「ながら運転」は、過失ではなく**「故意の危険行為」**です。
経営者であるあなたが、まずは「運転中のスマホは絶対に許さない」という強い姿勢を示してください。 そして、ドライバーがスマホを触らなくて済むような、ゆとりのある運行計画と連絡体制を作ること。それが、会社と従業員を守る唯一の道です。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。
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