運送業の経営者の皆様、毎日お疲れ様です。 真冬の早朝、ドライバーから「エンジンがかかりません!バッテリーが上がったみたいです…」という、血の気が引くような電話を受けた経験はございませんか?

バッテリー上がりによる運行遅延は、荷主からの信用失墜と、その日の売上を丸ごと失う機会損失に直結する、経営者が最も避けたいトラブルの一つです。

この「万が一」に備えて、多くの会社が営業所に**「予備のバッテリー」**をストックしているかもしれません。 しかし、もしそうなら、その備えは、残念ながら無駄になっている可能性が非常に高いです。 今回は、その理由と、はるかに賢く、低コストで確実な「本当の備え」について解説します。

なぜ、予備バッテリーのストックは「悪手」なのか?

「新品のバッテリーを1個、倉庫に置いておけば安心だ」 そう考えるのは自然なことですが、そこには大きな落とし穴があります。

バッテリーというものは、たとえ使わなくても、時間と共に「自然放電」していくのです。 特に、一度も車両に接続されていない新品バッテリーは充電される機会がないため、時間の経過とともに着実に電力を失っていきます。

その結果、いざ「出番だ!」と取り出した時には、すでに放電しきっており、1年も経たずに、ただの重たい「文鎮」と化している…というケースが、驚くほど多いのです。 数万円もする新品バッテリーの購入費用が、そのまま無駄になってしまいます。

【現場の知恵】そもそも「バッテリーを上がらせない」予防策

ジャンプスターターは「上がってしまった後」の治療法ですが、その前に、そもそも「上がらせない」ための、昔ながらの非常に有効な予防策があります。

それは、**「夜間に、バッテリーを毛布で包む」**という方法です。

バッテリーは、外気温(特に氷点下)が下がると化学反応が鈍くなり、エンジンを始動させる力(CCA値)が著しく低下します。 そこで、前日の業務終了後に、バッテリー本体に毛布や断熱材を巻き付け、翌朝、始動前にそれを外すのです。

たったこれだけで、夜間の放射冷却からバッテリーが守られ、温度の低下が緩やかになり、翌朝の始動性を格段に高めることができます。 (※走行中に熱がこもると危険ですので、必ず始動前に外してください)

解決策:トラック用の「ジャンプスターター」を備える

上記の「毛布」による予防策を講じても、バッテリーの寿命などで、どうしても突然のバッテリー上がりは発生します。 その時の「切り札」となるのが、**「ジャンプスターター」**です。

ジャンプスターターとは、バッテリーが上がってしまった際に、外部から一時的に強力な電力を供給し、エンジンを始動させるための「携帯用バッテリー」のようなものです。

予備バッテリーと違い、ジャンプスターターには以下の圧倒的なメリットがあります。

  • 小型・軽量で、持ち運びが容易
  • 自己放電が非常に少ない
  • 定期的な充電さえしておけば、いざという時に確実に性能を発揮できる

【最重要】ジャンプスターター選びの「重要ポイント」

ここで絶対に間違えてはいけないのが、**「トラックには、トラック用のパワーが必要だ」**ということです。

Amazonなどで安価に売られている乗用車用の小型なものでは、トラックの巨大なエンジン(特にディーゼルエンジン)を始動させるだけのパワーが全く足りません。

トラック用のジャンプスターターを選ぶ際は、必ず以下の点を確認してください。

  • 最大出力(A:アンペア): トラックを始動させるには、非常に大きな電流が必要です。24V車に対応していることはもちろん、ピーク電流が1000Aや2000Aを超えるような、強力なモデルを選んでください。
  • 安全機能の有無: 万が一の事故を防ぐため、「逆接続防止」や「ショート防止」といった安全機能が搭載されているモデルを選ぶと、ドライバーが慌てている時でも安心です。

コストと寿命:驚くほどの費用対効果

高性能なトラック用ジャンプスターターは、それなりの価格がします。しかし、コストパフォーマンスは予備バッテリーの比ではありません。

予備バッテリーは、ストックしておくと1年を待たずに使い物にならなくなる可能性があります。 一方、ジャンプスターターは、適切な製品を選び、半年に一度といった**定期的なメンテナンス(追い充電)**をしっかり行えば、5年以上にわたって、あなたの会社を「万が一」の事態から守り続けてくれる可能性を秘めています。

毎年、使えなくなるかもしれない予備バッテリーを買い替えるコストと、5年以上使えるジャンプスターターへの一度の投資。どちらが賢明な経営判断かは、明らかでしょう。ーターへの一度の投資。どちらが賢明な経営判断かは、明らかでしょう。

ジャンプスターターは、単なる便利グッズではありません。 それは、予期せぬ車両停止という経営リスクから会社を守り、荷主の信頼を失わないための、「戦略的な投資」です。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。

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