運送業の経営者の皆様、毎日お疲れ様です。 「改正トラック法」が施行され、自社の原価に基づいた「適正な運賃」を荷主に提示し、交渉を始めることは、もはや「任意」ではなく「義務」となりました。

しかし、多くの経営者様が、このような壁に直面しているのではないでしょうか。

「法律が変わったと説明しても、荷主側が『ウチは関係ない』と、取り合ってくれない」 「長年の付き合いで、今さら附帯料金なんて請求できる雰囲気ではない」

そのお気持ちは、痛いほど分かります。 しかし、もし荷主様が「現状維持」を貫いた場合、本当に危険な状況に陥るのは、実は荷主様ご自身でもあるという事実を、私たちは知っておく必要があります。

そして、そのリスクを荷主様に正しく伝え、共にこの激動の時代を乗り越えるよう導くことこそが、私たち運送事業者が今、果たすべき「ビジネスパートナー」としての、真の務めなのです。

1. 荷主が知らない「法律の現実」

まず大前提として、荷主様は、運送関連の法律や、私たちの業界が直面する危機(ドライバー不足、コスト高騰)について、どうしても疎いのが現状です。彼らに悪気はないのです。

しかし、「改正トラック法」は、もはや運送会社だけの問題ではありません。 荷主による「違反原因行為」(長時間の荷待ち、不当な低運賃の強要など)に対しても、行政は「トラックGメン」による監視を強化し、荷主勧告と社名公表という、極めて重い措置をためらわなくなりました。

2. 荷主が陥る「最大のリスク」とは?

私たちが、自社の原価計算に基づき、勇気を持って「運賃の見直し」や「附帯料金の提示」を行ったとします。 もし、荷主様がこの正当な要求を「現状維持」の一言で突っぱね続けた場合、何が起こるでしょうか。

それは、「悪質な荷主」として、行政指導の対象となるリスクです。 そして、ひとたび**「社名公表」でもされようものなら、その荷主様が長年かけて築き上げてきた「社会的信用」**は、一瞬で失墜します。

3. リスクを解説するのは、運送会社の「務め」である

ここで、私たちが持つべき心構えは、「荷主が法律を知らないのが悪い」と突き放すことではありません。 むしろ逆です。

荷主様が、知らず知らずのうちに法令違反のリスクを負い、信用を失うことがないよう、法律の専門家である私たちが、ビジネスパートナーとして、そのリスクと業界の激変を、毅然とした態度で解説しなければならないのです。 これこそが、これからの運送会社に求められる「務め」です。

もちろん、荷主様(特に一次産業ではない場合)の経営が苦しい状況も、私たちは理解しています。 だからこそ、「値上げします」という一方的な通告ではなく、「私たちの業界は、今こういう法律とコストの激変の最中にいます。御社の物流を止めないためにも、この適正な原価をご理解いただき、共にこの時代を乗り越えさせてください」という、対話の姿勢が不可欠です。

4. 最後の経営判断

このように、私たちが誠意をもって丁寧に説明をしてもなお、意識が変わらず、不当な取引を強いてくる荷主様とは、どう付き合うべきでしょうか。

残念ながら、答えは一つです。 少しずつでも、距離を置く勇気を持たなければなりません。

なぜなら、その不適正な取引を続けた結果、貴社の経営が「連続赤字」になれば、5年ごとの事業許可更新の際に、「法令を遵守する経営体質ではない」と判断され、貴社自身が淘汰されるきっかけになりかねないからです。

まとめ:対等なパートナーとして、対話を始めよう

これからの運送業界は、トラックドライバーの極端な減少と、コンプライアンスに対応できない運送会社の減少により、荷主が運送会社を選ぶ時代ではなくなると言われています。

もはや、私たちが「お願い」する必要はありません。 自社の経営を守り、そして何より、大切なビジネスパートナーである荷主様を法的なリスクから守るためにも、自信と勇気を持って、対等な「対話」を始めましょう。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。

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