運送業の経営者の皆様、毎日お疲れ様です。

「ちょっとくらい積載量を超えても、見つからなきゃ大丈夫だろう」— もし貴社やドライバーの中に、このような考えがあるなら、それは事業そのものを危機にさらす、極めて危険な兆候です。

貨物自動車の過積載運行は、単なる交通違反ではありません。それは、重大な交通事故を直接引き起こし、道路を破壊し、そして運送事業者、荷主、運転者すべてに、会社の存続すら危うくするほどの厳罰をもたらす、重大な法令違反なのです。

今回は、過積載が引き起こす深刻な事故リスクと、それを巡る厳罰化された法令遵守の重要性について、国土交通省などの公的な資料に基づき、徹底的に解説します。

1. 過積載運行が招く、避けられない「破綻」

「少しぐらい」の過積載が、なぜこれほどまでに危険視されるのか。それは、物理的な法則を無視した運行が、必然的に破綻を招くからです。

重大事故の直接的な引き金に

過積載は、車両のブレーキ性能を著しく低下させ、制動距離を大幅に伸ばします。また、重心が高くなりバランスを崩しやすくなるため、カーブでの横転や、急ブレーキ時の荷崩れのリスクも激増します。タイヤへの過負荷によるバーストも、過積載が原因となる典型的な重大事故です。実際に、過積載に関連する死亡災害も発生しており、これはもはや「運が悪かった」では済まされない問題です。

見えないコストの増大

目先の利益のために過積載を行うと、結果的に長期的なコストが確実に増大します。

  • 車両寿命の短縮: フレームやサスペンションへの過負荷は、確実に車両の寿命を縮めます。修理費や整備費の増加は避けられません。
  • 道路インフラへのダメージ: 過積載車両は、道路や橋梁に設計想定を超えるダメージを与え、社会全体のインフラ維持コストを増大させます。

2. 厳罰化!運転者・事業者・荷主、三者への重い責任

過積載に対する罰則は、年々厳格化されており、運転者個人だけでなく、事業者(会社)、そして荷主に対しても、極めて重い責任が課せられます。

運転者への罰則(道路交通法)

超過割合に応じて、運転免許の違反点数反則金が科されます。10割(100%)以上の過積載では6点が付され、一発で免許停止となります。さらに、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金という刑事罰の対象にもなります。

超過割合違反点数反則金(大型車)刑事罰
5割未満2点3万円
10割未満3点4万円
10割以上6点6ヶ月以下の懲役or10万円以下の罰金

事業者(会社)への行政処分(貨物自動車運送事業法)

運送事業者は、過積載運行の引受けや指示、あるいはそれを防止するための指導監督を怠った場合、国土交通省から厳しい行政処分を受けます。処分は違反の程度に応じて**「日車数」で計算され、累積すると事業停止**、さらには事業許可の取消しといった、経営の根幹を揺るがす事態に発展します。

違反行為超過割合初違反(日車×車両数)再違反(日車×車両数)
過積載による運送の引受け5割未満10日車20日車
5割以上10割未満20日車40日車
10割以上30日車60日車
過積載運送の指示20日車40日車
過積載防止の指導・監督の怠慢10日車20日車

初違反であっても車両停止処分が科される可能性があることを、絶対に忘れてはいけません。

荷主への責任追及

過積載の原因が、荷主からの無理な要求や指示にあると認められた場合、荷主も責任を免れることはできません。

  • 荷主勧告: 国土交通省は、悪質な荷主に対して勧告を行い、企業名を公表します。これにより、企業の社会的信用は大きく失墜します。
  • 荷主への罰則: 荷主が過積載運送を指示・容認した場合、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科される可能性があります。

荷主・元請事業者には、過積載にならないよう運送事業者に協力する義務があります。

3. 「バレなきゃいい」は、もはや通用しない

行政処分の基準において、「再違反」は過去3年以内の同一違反に対して適用されます。つまり、一度過積載で処分を受けると、その後3年間は、より重い処分を受けるリスクを背負い続けることになるのです。

過積載は常態化しやすく、一度の違反が、事業停止や許可取消という最悪の事態への引き金となり得ます。

結論:安全な輸送こそが、事業継続の唯一の道

過積載は、短期的には利益を生むように見えるかもしれません。しかし、長期的に見れば、事故リスク、高額な罰金・反則金、行政処分による事業停止、そして社会的な信用の失墜という、会社を確実に潰すほどの巨大なリスクを抱え込む行為です。

運送事業者、荷主、そして運転者が一丸となり、「しない!させない!見過ごさない!」という強い意志を持つこと。それこそが、安全で持続可能な物流を実現し、ひいては自社の事業を守る、唯一の道なのです。

今一度、自社の積載管理体制を見直し、法令遵守の徹底をお願いいたします。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、「きれいごと」で終わらない、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。

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