運送業の経営者の皆様、本日も安全運行、本当にお疲れ様です。

65歳以上のドライバーに義務付けられている「適齢診断」。

「とりあえず受けさせて、診断結果はしっかりファイルに綴じている。これでバッチリだ!」

……もしそう思われているなら、次の巡回指導で「指導」のハンコを押される可能性が高いです。厳しい言い方ですが、「受けさせて終わり」の状態では、巡回指導ではまず評価されません。安全管理としては、正直言って0点に近い状態です。

今回は、行政書士として、そして現場を預かる実務家として、巡回指導で指摘されないための、そして何より事故を防ぐための「診断結果の活用術」を解説します。


1. なぜ「受けさせるだけ」ではダメなのか?

国土交通省の「指導監督指針」では、診断を受けさせることだけでなく、**「その結果に基づき、個々の運転者の特性に応じた適切な指導を行うこと」が明確に求められています。

巡回指導員がチェックするのは、診断結果の有無ではありません。

**「その結果を見て、運行管理者がドライバーにどんなアドバイスをし、それをどう記録に残したか」**というプロセスです。実は、これは私自身も過去に巡回指導で指摘されたことがあります。

当時は「診断を受けさせて結果をファイルに保管しているから問題ないだろう」と思っていました。
しかし指導員からは、

「結果はありますが、この結果を見てどんな指導をしたかの記録がありませんね」

と指摘されました。

つまり、「受診させた」だけでは不十分で、その結果をどう活用したかまでが安全管理として評価されるということです。

極論を言えば、診断結果がどんなに悪くても、それに対する「適切な教育」が行われていれば不問になります。逆に、どんなに優秀な結果でも、ファイルに眠っているだけでは「実施していない」のと同じ扱いで減点対象なのです。

2. 巡回指導で負けない「3ステップ活用術」

では、具体的にどうすれば「活用している」と認められるのか。

以下の3ステップをルーティン化してください。

① 診断結果の「弱点」を赤ペンで囲む

診断結果が届いたら、まずは運行管理者が内容を精査します。「反応速度が遅くなっている」「動体視力が落ちている」など、加齢による変化が如実に出ている項目をチェックします。

② 対面での「フィードバック」と「指導」

これが最も重要です。ドライバー本人を呼び、結果を見せながら面談します。

「最近、右側の死角が気になりませんか?診断結果でも反応が少し遅れているので、交差点では特に意識しましょう」といった、具体的な声掛けを行います。

③ 「指導監督記録簿」への詳細な記録

面談した内容は、必ず記録に残します。彼ら目線では記録に残さないと何もやっていないのと同じなのです。

単に「適齢診断の結果に基づき指導した」と書くのではなく、

「視力低下の傾向が見られたため、車間距離を普段の1.5倍取るよう指示。本人も納得し、実施を約束した」

このように、**「診断結果+具体的なアドバイス+本人の反応」**をセットで残す。これが巡回指導で「100点」と言わせるための記録術です。


3. 安全管理は、会社を守るための「損害保険」

適齢診断を「面倒な義務」と捉えるか、「事故を防ぐ武器」と捉えるか。

ここが経営の分かれ道です。

ベテランのドライバーさんは、自分の技術にプライドを持っています。だからこそ、こうした客観的なデータ(診断結果)を元に話をすることで、角を立てずに安全意識を高めることができるのです。

教育効果は、
「診断結果という客観データ」
「運行管理者の分析」
「具体的な指導」
この3つが揃って初めて生まれます。

こうした「守りの管理」を徹底している会社こそが、荷主から「信頼できるパートナー」として選ばれ、対等な運賃交渉ができるようになります。


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この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送業の現場と経営に27年間携わる現役の行政書士。
トラック運送会社で配車・営業・運賃交渉に関わってきた経験をもとに、
運送業のリアルな課題を法律と現場の両面から解説しています。

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