運送業の経営者の皆様、毎日お疲れ様です。 日々の配車、ドライバーの労務管理、高騰する燃料費への対策…。これらに加えて、年に一度、2年に一度とやってくる、様々な法的手続きの期限管理に、頭を悩ませてはいないでしょうか。
「36協定の更新、そろそろのはずだけど…」 「あのドライバーの適齢診断、次の期限は…?」「社長、もうすぐこの車両車検ですけど?」
こうしたスケジュール管理の漏れは焦りと、かなりのストレスの蓄積になります。
この記事では、高価なソフトや、パソコンが苦手な方には面倒なExcelは一切使わない、シンプルですが驚くほど確実なアナログ管理術を解説します。
これは実際に私がスケジュール管理に使っています。管理術という程ではないですが参考になれば幸いです。
なぜ、運送業のスケジュール管理は難しいのか?
まず、なぜ私たちの業界のスケジュール管理がこれほど複雑なのかを整理しましょう。
- 周期がバラバラ: 車検(1年毎)、運行管理者講習(2年毎)、適齢診断(3年毎)など、管理対象によって周期が全く異なります。
- 対象が複数: 車両ごとの管理と、従業員ごとの管理が混在しています。
- 忘れやすい: 2年に1度、3年に1度のタスクは、日常業務の中で記憶から抜け落ちやすいものです。
解決策:3年先まで見通す「ホワイトボード」管理術
解決策は、事務所の壁に**「3年先までのスケジュール」**を常に見えるようにしておくことです。
ステップ1:3つのホワイトボードで「未来」を準備する
まず、安価なもので構いませんので、ホワイトボードを3つ購入します。
- それぞれのボードの上部に、水性マジックで**「2025年」「2026年」「2027年」と、大きく年を書きます。 ※ここを水性**にするのが、このシステムを使い回すための重要なポイントです。
- 各ボードに、油性マジックで横線を11本引き、12ヶ月分の行を作ります。(1月〜12月)
これで、会社の未来3年間のスケジュール基盤が完成しました。
ステップ2:「動かない予定」を油性マジックで書き込む
次に、毎年ほぼ同じ時期に発生する、「動かない予定」を、各ボードの該当する月に油性マジックで直接書き込んでしまいます。
- 例:3月の行に**「36協定 届出」**
- 例:6月の行に**「事業年度報告書 提出」**
- 例:9月の行に**「健康診断実施」**
油性で書いてしまうのがポイントです。これで、毎年必ずやるべきことが、消えることのない会社のルールとして固定化されます。
ステップ3:「動く予定」を色分けマグネットで管理する
ここからが、この管理術の肝となる部分です。車両や人に関連する、「動く予定」を、色分けしたマグことができます。
【用意するもの】
- 4色のマグネット 複数個
- 油性マジック(細字)
【マグネットの作成と色分けルール】
- 青色マグネット(車両)
- 車両ごとのマグネットです。油性マジックで**車番(例: 神戸100あ12-34)**を書きます。
 
- 車両ごとのマグネットです。油性マジックで**車番(例: 
- 赤色マグネット(高齢ドライバー)
- 65歳以上のドライバーのマグネットです。**名前(例: 鈴木 一郎)**を書きます。(高齢者適性診断の管理用)
 
- 65歳以上のドライバーのマグネットです。**名前(例: 
- 緑色マグネット(運行管理者)
- 運行管理者ごとのマグネットです。名前を書きます。(一般講習などの管理用)
 
- 黄色マグネット(整備管理者)
- 整備管理者のマグネットです。名前を書きます。(選任後研修などの管理用)
 
この色分けルールをボードの隅にでも書いておけば、誰が見ても間違うことはありません。
マグネットを配置し、「未来のタスク」を予約する
最後に、作成したマグネットを、**「次回の期限が来る月」**の行に貼り付けていきます。
- 例: 12-34のトラックの車検が「2025年11月」なら、2025年のボードの11月の行に、そのトラックの青いマグネットを貼る。
- 例: 鈴木さんの運行管理者講習が「2026年8月」なら、2026年のボードの8月の行に、鈴木さんの緑のマグネットを貼る。
これで、会社の未来3年間に発生する、全ての重要タスクが「見える化」されました。
【最重要ルール①】タスク完了後、マグネットは即座に「未来」へ動かす
このシステムの最も重要なルールです。
例えば、2025年11月に12-34のトラックの車検が終わったとします。その作業が完了した瞬間に、その青いマグネットを、次の期限である「2026年のボードの11月の行」に移動させるのです。
タスクが終わるたびに、次のやるべきことが確定する。この繰り返しが、更新漏れを100%防ぎます。
【最重要ルール②】年に一度、「未来」を更新する
そして、このシステムを永久に使い続けるための、年に一度の更新作業です。
2025年の業務が終わったら、一番左にあった「2025年」のボードの年号をきれいに消します。そして、そのボードに水性マジックで新しい年**「2028年」**と書き込み、一番右に移動させます。
これにより、常に3年先までが視界に入る状態が維持されるのです。
まとめ:スケジュール管理は、会社の「守り」の要
この「3年ホワイトボード」管理術は、事務作業の効率化が目的ではありません。行政処分や事業停止といった、会社の存続を揺るがす重大なリスク(車検切れ、36協定期限切れなど)から、確実に会社を守るための仕組みなのです。
まずは、あなたの机の上にある車検証を1枚手に取り、来年のボードにマグネットを一つ置くことから始めてみてください。その一歩が、日々の「うっかり」への不安をなくし、経営に安心感をもたらします。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、「きれいごと」で終わらない、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。
▼運送業の経営に関するご相談はこちら [行政書士岩本哲也事務所]
 
			 
						