日本の物流を守る監視体制「トラック・物流Gメン」を徹底解説!
私たちの生活に欠かせない「物流」が、今、大きな危機に直面しています。その中心にあるのが、トラックドライバーの**「担い手不足」と、2024年4月に適用された時間外労働の上限規制(年960時間)に伴う「2024年問題」**です。
ドライバーの長時間労働や低賃金の背景には、恒常的な長時間の荷待ちや契約にない付帯作業の強要、無理な運送依頼といった、悪質な荷主や元請事業者による**不適正な取引慣行(違反原因行為)**が存在します。
この深刻な状況を打破し、日本のサプライチェーン全体の取引環境を適正化するために、国土交通省が創設し、強力に推し進めている監視体制こそが、**「トラック・物流Gメン」**です。
組織概要:360名体制で物流の公正取引を監視
もともと令和5年7月に発足した「トラックGメン」は、その活動の成果として、すでに荷主等に対して1,000件を超える是正指導を実施するなど、着実に成果を上げてきました。
さらに、物流全体の適正化を図るため、倉庫業者からの情報収集も行うべく、令和6年11月1日をもって**「トラック・物流Gメン」へと改組・拡充されています。この拡充により、体制は総勢360名規模へと大幅に強化されました。この360名には、各都道府県のトラック協会が新たに設ける「Gメン調査員」166名**も含まれており、国と地方が連携して荷主等への監視を強化しています。
彼らの活動は多岐にわたります。特に11月および12月は集中監視月間と定められ、プッシュ型の情報収集等を実施し、適正な取引を阻害する疑いのある悪質な荷主等に対する監視が強化されます。実際に、令和6年12月19日には、北陸信越運輸局管内の富山運輸支局において、Gメン調査員と合同で道の駅カモンパーク新湊にてドライバーへの情報提供を呼びかける活動が実施されるなど、現場での取り組みも活発です。
このGメンの存在は、トラックドライバーの労働条件を守り、持続可能な物流を実現するための切り札と言えます。
次章のQ&Aでは、この「トラック・物流Gメン」の具体的な役割、活動実績、そして情報提供の方法について、さらに詳しく解説していきます。と回答)を作成します。
トラック・物流Gメンに関するQ&A
Q1:トラック・物流Gメンとは、どのような組織ですか?
A1: トラック・物流Gメンは、国土交通省が中心となって設置・運営している監視体制です。 主な役割は、**悪質な荷主や元請事業者等による不適正な取引慣行(違反原因行為)**を是正指導することにあります。これにより、トラックドライバーの労働環境の改善と、持続可能な物流体制の確立を目指しています。
もともと「トラックGメン」として令和5年7月に発足しましたが、令和6年11月1日からは、倉庫業を含めた物流全体の適正化を図る観点から、**「トラック・物流Gメン」**へと改組・拡充されました。
Q2:「トラック・物流Gメン」が創設・拡充された背景にある課題は何ですか?
A2: 主な背景には、日本の物流が抱える以下の課題があります:
- ドライバーの担い手不足: トラックドライバーは労働時間が長く、低賃金にあることから、担い手不足が喫緊の課題となっています。
- 「2024年問題」への対応: 働き方改革の一環として、2024年4月からドライバーに時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されましたが、これが物流に影響を与える懸念(「2024年問題」)があります。
- 悪質な取引慣行の是正: 長時間労働の原因となる、荷主や元請事業者による恒常的な長時間の荷待ちや、契約にない付帯作業の強要、無理な運送依頼などの違反原因行為を是正する必要があります。
また、荷待ち時間の削減などのためには、倉庫業者における取り組みも重要であり、倉庫業者からも幅広く情報収集を行うために、組織が「トラック・物流Gメン」へと拡充されました。
Q3:現在の「トラック・物流Gメン」の体制はどのくらいの規模ですか?
A3: 「トラック・物流Gメン」の体制は大幅に強化・拡充されています。
- 総勢360名規模に拡大されました。
- これには、現行のGメン(創設時は162名)に加え、国土交通省の物流担当職員(本省・各地方運輸局等)29名、そして各都道府県のトラック協会が新設する**「Gメン調査員」166名**が加わります。
この総勢360名規模の体制により、荷主等に向けた対策の実効性をさらに高めることが目指されています。
Q4:「Gメン調査員」とはどのような役割を担っていますか?
A4: Gメン調査員は、**地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(都道府県トラック協会)**に設置されています。
Gメン調査員の主な役割は、トラック事業者からの情報収集(巡回指導時や電話・訪問調査など)を行い、収集した情報を国のGメンと連携・役割分担することです。また、荷主・元請事業者等への調査や現場確認、周知・協力要請といった活動を、国のGメンと同行して実施することもあります。
Q5:トラック・物流Gメンは具体的にどのような活動をしていますか?
A5: 主な活動内容は、悪質な荷主や元請事業者に対する監視・情報収集・是正指導です。
- 集中監視月間: 国土交通省では、例年11月および12月をトラック・物流Gメンによる集中監視月間と定めており、この期間中は監視を特に強化しています。
- 情報収集: プッシュ型の情報収集を実施するほか、トラックドライバーからの情報提供を促すため、目安箱の設置や、最寄りの運輸局・運輸支局等での電話・訪問調査などを活用しています。
- 是正措置の実施: 収集した情報に基づき、**貨物自動車運送事業法(トラック法)**に基づき、荷主・元請事業者等に対して是正措置(勧告、要請、働きかけなど)を実施します。
Q6:是正指導の実績はどのくらいありますか?また、どのような措置がありますか?
A6: 「働きかけ」等の累計実施件数(令和7年8月31日現在)によると、是正指導は着実に実施されています。
| 措置 | 累計実施件数(令和7年8月31日現在) | 内訳(例) | 
|---|---|---|
| 勧告 | 4件 | 荷主2件、元請1件、その他1件 (例:王子マテリア株式会社、ヤマト運輸株式会社、NX・NPロジスティクス株式会社、株式会社吉野工業所に対して実施) | 
| 要請 | 188件 | 荷主100件、元請82件、その他6件 | 
| 働きかけ | 1,757件 | 荷主1,228件、元請466件、その他63件 | 
Q7:是正指導の透明性や公平性をどのように確保していますか?
A7: 国土交通省は、是正指導の透明性や公平性を確保し、関係者の一層の理解と協力を得るため、「貨物自動車運送事業法附則第1条の2に基づく荷主への是正指導指針」を、行政手続法第36条に基づく行政指導指針として定めています(令和7年10月1日付け)。
この指針により、是正指導の基準や考え方が明確化され、公正な行政指導が確立されます。
Q8:違反原因行為について情報提供するにはどうすれば良いですか?
A8: 荷主・元請事業者等による違反原因行為(恒常的な長時間の荷待ち、契約にない付帯作業、無理な運送依頼など)にお困りの場合、以下の方法で情報提供が可能です:
- 目安箱へ情報を寄せる。
- 最寄りの運輸局・運輸支局等に電話で情報を提供する。
- 集中監視月間中に実施される周知・啓発活動の場で情報提供を行う。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、「きれいごと」で終わらない、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。
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