運送業の経営者の皆様。本日もお疲れ様です。

「前の車、わざと急ブレーキ踏んでないか?」 「追い越し車線をノロノロ走って、こっちが近づくとスマホで後ろを撮影している……」

ドライバーがこんな不可解な動きをする車に遭遇したと報告を受けたことはありませんか?

もし遭遇したら、最大限の警戒をしてください。その相手は、ドライバーを怒らせ、あおり運転を誘発させようとする**「あおらせ屋(あおらせ運転)」**かもしれません。

彼らの狙いは、カッとならせて車間距離を詰めさせ、その映像をSNSや動画サイトに投稿して「いいね」や「再生数」を稼ぐことです。

ひとたび「悪質トラック」として拡散されれば、会社には苦情の電話が殺到し、荷主からの信頼を一瞬で失います。 今回は、プロドライバーを罠にかける「あおらせ運転」の悪質な手口と、SNS社会特有の「炎上リスク」から身を守る防御策を解説します。


なぜトラックが狙われる? 「あおらせ屋」の歪んだ心理

残念ながら、世の中には「トラック=悪」「トラック=邪魔」という偏見を持つドライバーが一定数存在します。さらに最近では、**「動画のネタ」**としてトラックを利用する悪質なケースが増えています。

  • 「SNS・動画配信者」タイプ(最悪のパターン): 「あおり運転を撃退してみた」等のタイトルで動画をアップし、視聴回数や広告収入を稼ぐことが目的。自分たちが先に仕掛けた挑発行為はカット編集し、トラックが怒って詰め寄ったシーンだけを切り取って「被害者」を演じます。
  • 「正義マン」タイプ: 「トラックが追い越し車線を走るな」という独自のルールを押し付け、わざと前に入って減速し、トラックを「指導」しようとするタイプ。
  • 「当たり屋」タイプ: わざと追突されやすい状況を作り出し、示談金や保険金を狙うタイプ。

彼らに共通するのは、**「相手(あなた)が怒ってリアクションするのを待っている」という点です。 ここであなたがクラクションを鳴らしたり、パッシングをして車間を詰めたりしたら、それは彼らにとって「最高に美味しい画(え)」**を提供することになってしまうのです。


会社を潰す「SNS拡散」の恐怖

ここが一番恐ろしい点です。 もし、挑発に乗って車間を詰めてしまい、その映像が社名入りで拡散されたらどうなるか。

  1. 会社への「電凸(電話突撃)」の嵐
    • 「お宅のドライバーはどうなってるんだ!」「人殺し企業!」といった苦情電話がひっきりなしにかかり、業務が麻痺します。
  2. 荷主への飛び火と取引停止
    • ネット特定班は、トラックの看板から荷主まで特定します。「〇〇の荷物を運んでいるトラックが危険運転」と拡散されれば、荷主はブランドイメージを守るため、あなたの会社を即座に切ります。
  3. デジタルタトゥーとして残り続ける
    • たとえ後で「相手が先に仕掛けてきた」と証明できたとしても、ネット上に一度広がった「悪質企業のレッテル」は二度と消えません。採用活動にも深刻な影響が出ます。

「挑発に乗る」ということは、会社の看板に泥を塗るどころか、火をつける行為なのです。


挑発に乗ったら「一発アウト」の理不尽な現実

法的にも、状況は絶望的です。 たとえ、きっかけが相手の「嫌がらせ」だったとしても、それに対してあなたが**「車間距離を詰めて威嚇」してしまえば、警察はあなたを「妨害運転(あおり運転)の加害者」**として扱います。

  • 「先に仕掛けられた」は免罪符になりません。
  • 「相手が動画を撮っていたから」も、言い訳にはなりません。

相手の挑発に乗って「オラァ!」と詰め寄った瞬間、あなたは**「免許取り消し」という死刑宣告と、「会社を炎上させた戦犯」**という汚名の両方を背負うことになるのです。


「あおらせ」に勝つ唯一の方法は「無視」と「記録」

では、こうした悪意あるドライバーに遭遇したらどうすればいいのか。 答えは、**「徹底的に関わらないこと」**です。相手に「撮れ高」を与えてはいけません。

1. 「減速」して距離を取る(最重要)

相手が変な動きをしたら、アクセルを緩めるか、軽くブレーキを踏んで、意図的に車間距離を大きく空けてください。 「逃げるが勝ち」です。距離さえ空いていれば、相手は「迫力のある映像」が撮れず、諦めて去っていきます。

2. 「独り言」で実況中継する

カッとなったら、声に出して状況を実況してください。 「おっと、前の車が急減速。動画撮ってるのかな?」「ナンバー〇〇、挙動不審車発見。距離をとります」 これは自分の怒りを鎮める効果があるだけでなく、車内の音声録音として「相手が危険だった」という証拠に残ります。

3. ドラレコを信じる

「あんな運転されて、黙っていられるか!」と思うかもしれません。 しかし、今のトラックには高性能なドライブレコーダーが付いています。 「俺が裁かなくても、この映像があれば警察が裁いてくれる」と信じてください。 もし相手が編集動画をアップしても、こちらには「事の一部始終(相手の挑発行為)」が映ったノーカットの証拠があります。それが会社を守る最強の武器になります。


まとめ:同じ土俵に立たないのが「プロ」の矜持

「あおらせ屋」は、あなたを喧嘩のリングに上げようと必死です。 しかし、そのリングに上がった時点で、あなたは「免許」と「会社の信用」という人質を取られた状態で戦うことになります。これほど分が悪い勝負はありません。

「変な奴がいたら、関わらずにスルーする」

これは弱気な態度ではありません。 自分の生活と、家族と、会社の看板を守るための、最も高度で賢い**「プロの防衛術」**です。

挑発には乗らない。ただ記録する。 それが、SNS社会における最強のドライバーです。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。

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