運送会社の経営者の皆様、本日もお疲れ様です。

毎月の請求書を見て、「なぜ高速代はこんなに高いのか」「なぜ深夜割引のルールがコロコロ変わるのか」と憤りを感じたことはありませんか?だれの許可を経て値上げしてるんだ?と思いませんか?

実は、高速道路の料金が決まる仕組みは、我々運送業者から見ると非常に不透明で、複雑な**「3者のパワーバランス(トライアングル)」**の上に成り立っています。

今回は、この構造を知ることで、経営者が「自力ではコントロールできないコスト」の正体を正しく理解し、荷主との交渉に活かすための知識を整理します。

1. 高速道路を支配する「3つのプレイヤー」

高速道路の料金やルールは、以下の3つの組織が複雑に絡み合って決定されています。

① NEXCO(東・中・西日本):現場の「管理人」

私たちが一番身近に接する組織です。主な役割は道路の**「維持管理」と「運営」**です。料金の徴収実務も行いますが、実は彼らに「料金を自由に決める権限」はありません。

② 日本高速道路保有・債務返済機構(通称:機構):真の「オーナー」

ここが最も重要です。道路資産を所有し、莫大な**「借金の返済」**を管理する組織です。NEXCOはここから道路を借りて営業しています。料金収入のほとんどは、この機構を通じて借金の返済に充てられます。

③ 国土交通省(国交省):ルールの「審判」

料金体系の変更や新しい割引制度の導入には、すべて国交省の認可が必要です。政治的な判断や、2024年問題などの「物流対策」を反映させる司令塔です。

2. なぜ「タダ」にならないのか?「2115年」という絶望的な数字

かつて、高速道路は「借金を返し終えたら無料にする」という約束でした。

しかし、現実にはどうでしょうか。老朽化した橋やトンネルの修繕費用が膨らみ、2023年の法改正で、借金の返済期限はなんと**「2115年」**まで延長されました。

つまり、私たちの孫の代まで、高速道路が無料になることは絶対にありません。

この「動かせない借金返済計画」があるからこそ、割引率の改定や深夜割引の見直し(2025年〜2026年にかけての大改正など)が行われる際も、結局は「トータルの料金収入を減らさない」というパズルのような調整が行われるのです。

3. 経営者がこの構造を知る「実務上のメリット」

「そんな仕組みを知っても、安くならないなら意味がない」と思われるかもしれません。

しかし、荷主との交渉において、この知識は強力な**「理論武装」**になります。

荷主はしばしば、「高速代込みの運賃」を求めてきます。しかし、このトライアングル構造を見れば分かる通り、高速料金は運送会社の努力で削減できる「経費」ではなく、実質的には国が決めた**「公租公課(税金に近いもの)」**です。

やっと運賃交渉して千円値上げしてもらった。とほっと一息ついた数か月後に高速料金の値上げとかあれば無意味になります。

高速料金 = コントロール不能な公的コスト

この認識を荷主に持たせ、「燃料費と同じように、高速代も実費、あるいはスライド制で考えるべきだ」と主張する際の、客観的な裏付けとして使ってください。

まとめ:構造を知れば、交渉の矛先が変わる

高速料金は、NEXCOの一存で決まるものではありません。国と機構が「100年後の完済」を見据えてガチガチに固めたルールです。

拙著『【トラック新法対応】「お願い」する運賃交渉を、今日で卒業する本。』でも解説してますが、「自社でコントロールできないコスト」を背負い込まないこと。それが、運送業経営を健全化するための鉄則です。

仕組みを理解し、感情論ではなく「構造の限界」を語れる経営者になりましょう。

この記事を書いた行政書士

岩本 哲也

運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。

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