運送業の経営者の皆様、2026年(令和8年)を迎え、業界のルールは「お願い」の段階を完全に脱しました。 いよいよ2026年4月1日から、改正貨物自動車運送事業法の「白トラ(自家用車による違法運送)」利用に対する規制が、かつてないほど厳格化されます。
これまで、違法運送で追及されるのは主に運送事業者側でした。しかしこれからは、依頼した「荷主」や「元請け」が直接、重い罰金と社会的責任を負うことになります。
今回は、実業家・行政書士の視点から、この「地殻変動」とも言える改正の全貌と、依然として無くならない「名義貸し」という時限爆弾のリスクを整理しました。
1. 2026年4月、荷主への「罰金刑」がついに新設
今回の改正で最も衝撃的なのは、違法な白トラ事業者に運送を依頼した**「荷主(依頼主)」への直接的な罰則**です。
- 100万円以下の罰金刑: 改正後は、違法な白トラ事業者に運送を依頼した荷主に対し、100万円以下の罰金が科される可能性があります。
- 行政処分と社名公表: 国土交通大臣による「改善要請」や「勧告」が行われ、それに従わない場合は社名が公表されるリスクもあります 。
これは、いわば**「テストでカンニングをした生徒(白トラ業者)だけでなく、カンニングペーパーを作らせた生徒(荷主)も一緒に先生に怒られる」**というルール変更です。これによって、業界全体で「不正を許さない空気」が強制的に作られようとしています。
2. 「多重下請け」へのメス:再委託は原則2次受けまで
白トラが入り込む大きな要因となっている「多重下請け」構造にも、実効性のある制限が入ります 。
- 再委託の制限: 運送事業者に対し、下請けに出す回数(再委託)を原則**2回まで(2次受けまで)**とする努力義務が課されます 。
- 中抜きの排除: 下請けが重なることによる「中抜き」を防ぎ、ドライバーの報酬を確保するとともに、管理の届かない層に「安価だが違法な白トラ」が入り込む余地をなくすことが狙いです。
3. 依然として消えない「名義貸し」という時限爆弾
「白トラ」と並んで、私が何度も繰り返し警告しているのが「名義貸し」です。 「人手が足りないから、知人の白ナンバー車をうちの仕事に混ぜる」「実際は別の会社が運営しているが、名前だけ自社の看板を付ける」……。これらはすべて、一発で事業許可の取消しに直結する重罪です。
- 5年更新制によるチェック: トラック新法で導入された「5年ごとの事業許可更新制」では、実態のない名義貸し会社や、適正な原価管理ができていない会社は、更新の土俵にすら上がれません 。
- 元請け・荷主の共倒れリスク: 名義貸しが発覚すれば、貸した側だけでなく、その車両に荷物を預けた荷主や元請けまでが連鎖的に処分の対象となります。
4. 実務上の変更:貨物利用運送事業者への義務拡大
自社でトラックを持たず運送を手配する「貨物利用運送事業者」に対しても、これまで以上に厳しい義務が課されます。
- 書面交付義務の準用: 実運送事業者に課されていた契約時の書面交付義務(法第12条)などが、貨物利用運送事業者にも準用されます 。
- 契約内容の透明化: 誰が、どのような条件で、いくらで運ぶのかを明確にすることが、「絶対的なルール」になります。
5. 企業(荷主・元請け)が今すぐ準備すべきこと
2026年4月に「知らなかった」と慌てないために、今すぐ以下の対策を講じてください。
- 許可証の確認徹底: 依頼先が正規の「緑ナンバー」許可業者であるか、許可証の写しを確認するプロセスを厳格化してください。
- 下請け構造の把握: 自社が依頼した荷物が、許可なく再々委託(3次受け以降)されていないか、管理体制を見直す必要があります。
- 適正運賃の受容: 違法な安売りに頼らざるを得ない状況を脱し、正当な原価に基づく「適正な運賃」を支払うことこそが、最大のコンプライアンス(法令順守)になります 。
まとめ:2026年は「本物」だけが生き残る年
荷主は今、自社が「荷主勧告」を受けるリスクを極端に恐れています 。 私たちがすべきことは、違法な安売りや名義貸しに手を染めることではありません。
拙著『【トラック新法対応】「お願い」する運賃交渉を、今日で卒業する本。』でも強調しましたが、「適正な原価」に基づいた正当な運賃を提示することこそが、結果として荷主を違法行為(白トラ利用)のリスクから守ることに繋がるのです 。
行政書士として、そして同じ運送業界を生きる経営者として、私は皆様が「法を盾にして」正々堂々と利益を出せる体制を築くお手伝いをいたします。
この記事を書いた行政書士
岩本 哲也
運送会社の経営に携わる、現場経験豊富な現役の行政書士。 法律知識と現場感覚を掛け合わせ、運送業経営者のための実践的なコンサルティングを得意とする。
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▼「運賃交渉」を学びたい方へ 適正原価等、深く解説した書籍を執筆しています。「どんぶり勘定」を卒業し、自信を持って経営判断を下したい方は、ぜひご一読ください。 [【トラック新法対応】「お願い」する運賃交渉を、今日で卒業する本。]